久しぶりに恋をした。
それは2冊目の写真集のために日本にきて、いつも通りスタジオで撮影してた時のこと。
張爽は楽しんでいた。みんなでかわいい衣装で集合写真を撮るのはにぎやかで明るくて好きだった。
何枚か撮った後、向きを変えて撮る時だった。急にカメラさんが大きな声をだした。
「コラ誰だ!シュアンさんの椅子の裏のテープを取り忘れてるぞ!」
「あっ、ハイ!僕です・・・すいません!」
そう言って1人の若い男性があわててシュアンの所に行った。今にも泣きそうな顔だったので
「がんばってください」
とシュアンが小声で日本語で言った。すると彼は、ニコッ!と笑顔になってくれた。
それを見た瞬間・・・・ドキッとした気持ちになった。その笑顔がお父さんの笑った顔に似てたから・・・・
彼はテープを取るとすぐに奥に行ってしまった。
この後の撮影が笑顔の写真で良かったー、ハニカミ顔が止まらなくなってしまったんだもん。
「シュアン、なーんかいいことあった?」
昼食中、周健楠 が微笑みながら覗きこむように顔を見てきた。
「えー、別になんもないよー!」
「ウソ。顔にでるからバレバレよ。なんなのさー、まさか恋をしたとか・・・?」
メンバーが一斉にシュアンを見る。さすが女の子、恋って言葉に反応早い!
「違う違う!なんもないって!」
「えーだれだれ?いつ見かけたのー?スタッフの人とか?」
ギクッ!でも今回は言わない♪
「あ、ひょっとしてさっきの見習いさん?かっこいいよね」
みんなの質問攻めに対応しきれなくなったシュアン。
「もー!!違うったらぁー!」
つい、大きい声出しちゃった。恥ずかしい・・・あの人にも聞かれちゃったかな・・・
心配したがシュアン達は中国語で話していたため、通訳さんは笑ってたが他の人は誰も見てなかった。
その後、撮影は続いたが、彼は本当にしたっぱの見習いらしくこっちからはよく見えなかった。
「それは、ただの憧れだね」
馬菁菁 が腕をくんで言う。夜のホテルの部屋、私たちはいつも同室だった。
シュアンはジンジンだけには隠し事をしない。どんな些細な事であっても必ず言いあう約束があるから。
「やっぱりそう思う?」
「だって、笑顔がお父さんに似てるってだけで、何も知らないし・・・調べる気もないんでしょう?」
「・・・・・・・正解。」
そう、彼の名前も年齢も住んでる所も、ましてや結婚してるかどうかも知らないのだ。でも何故か、このままでよかった。知りたくないわけじゃないけど、ちょっと怖い、本気になってしまったら辛くなる。
「なんか、このまま楽しんでたいの。この日本にいる期間だけでいいから!」
「てことは4日間の恋ね。しかも見てるだけ・・・。たまにはいいかっ、許してあげる!フフフ」
やった、ジンジンのお許しが出たー。仕事以外の事には不器用な私、でもこれで安心だわ・・・・。
次の日は外の撮影。楽坊が露店でお買い物してる風景の撮影だった。
移動してる時、チラッと彼のほうを見る。セッセと機材を運んでいる姿にちょっと笑った。
・・・今だけ、このままでいさせて下さい・・・
今日はいつもより格別に楽しかった。シュアンはずっと笑ってた。
メンバーとかわいい服を見つけておススメしたり、アクセサリを手に取ってみたり、帽子をかぶせ合ったり・・
仕事とはいえ彼はこっちを見てるから。恥ずかしいやら嬉しいやらで、はしゃがずにはいられなかった!
「おっ、シュアンちゃん今のショットいいね~、こっち向いてもう一回!」
と何度もカメラさんに呼び止められていた。いい笑顔だよ、と何枚も撮る人の後ろには、あの彼がいた。
大きなバックを持って重たそうにしてるが、私を撮ってる時は必ず微笑んでこっちを見てた。
・・・照れちゃうよー、でも嬉しいな♪ほんと、お父さんが笑ってるみたい・・・
「シュアン!どうしたの?終わってるよ。ほら行こう!」
「わぁ!うん、そだね、行こう行こう」
「今見とれてたんでしょ。もう、周りにバレちゃうよ」
それは困る。私って思いこんだら一直線なんだよね・・・仕事中なのに切り替えが出来ないタイプだから。
「ねぇシュアン、あの見習いさんが気に入ってるんでしょ?実は私もなんだよねー」
「えっ!困る!それになんで知ってるの?」
張琨が、ライバルだね、頑張ろう!と言うと、楽しむように笑いながら走って行った。
「ちょっと。・・・・・・・・・・あ!ジンジン、言ったでしょ!?」
「アハハ。だって、片思いでもスリルがあったほうが面白いでしょ。せっかくなんだから楽しまなきゃ!」
「いらないよー!もージンジンったらぁー!」
彼女はイタズラっ子の顔して、口に手をあてて笑ってた。許しをもらったのはこのためなのね。
ライバルなんていらないよ。私はただ帰る日まで、のんびりと彼を見つめてるだけでよかったのに・・・・
もう、と怒ってるのか不安なのかよくわからない顔するシュアン。あと2日しかないのに・・
そんな気持ちでも彼をちらっと見る。笑ってる顔・・・やっぱりパパに似てるな・・・
その夜はみんなの恋話で盛り上がってた。シュアンは不安もなく純粋に楽しかった。
3日目。今日は残りを全部撮る感じで、午前は川原で撮り、午後はスタジオで個人や数名撮り。
「今日も天気よくてよかったー。川がキラキラしてるよ!後で遊びたいね!」
シュアンは機嫌が良かった。さっき、彼の汗かいた笑顔が日に当たってとても素敵に見えたからだ。
「さっきの彼かっこよかったね!見た?」
とクンと言いあって笑った。ライバルとゆーより恋仲間になっていた。やっぱり楽坊は何あっても仲がいい。
お昼近くなってジンジンの姿が見当たらない事に気がついた。クンに聞くと
「あそこにいるわよ。なにやってんだろーねー」
指差した方向はスタッフのワゴン車のとこだった。ジンジンがチラチラと私達と車を交互に見てる。
「ジーンジン!なにやってるの?」
「・・・いや何でもないわ。行きましょ」
「怪しい!それっ、見ちゃえー」
勢いよくクンにくっついて車の反対側を見る。そこには、あの彼と女の子がいた。
「お弁当ありがとう。わざわざ仕事場に持ってくるなんて・・・嬉しいよ」
照れながら彼がお礼を言う。その彼女もまた照れ笑いしてた。
「彼女がいたんだ・・・・・・・・」
恋人なのか奥さんなのか分からないが、とにかく二人に入る隙間は誰がみてもないような雰囲気だった。
「・・・戻ろうか、シュアン」
「うん・・・・」
何も言わなくても肩を寄せ合った。ポロポロ涙をこぼしたかった・・・
帰る日。空港での待ち時間。シュアンとジンジンは座って話していた。
「もう落ち着いた?」
「うん。昨夜ジンジンにすがって思いっきり泣いたからスッキリした。もう大丈夫よ」
「そんなに好きだったの?」
「わかんない。でも顔見てる事が幸せだったの。忙しいのにその時だけは時間が止まったように感じた・・・だから見てるだけのつもりだったのに、ちょっぴり本気になっていってたのかな。自分でもわかならいけど」
「だったら失恋だとわかった時は苦しくなかった?」
突然ジェンナンが割り込んできた。ジンジンがちょっと驚いた。
「知ってたわ、シュアンが恋してたって事。誰に聞いたわけでもないけど・・・大人の勘でね」
さすがだ、とジンジンは関心したが、シュアンは動じなかった。
「私ね、彼のこと最後まで何も知らなくてよかったと思う。名前も年齢も知らないから、ドキドキできたのかなって・・・いろいろ知ってしまったらますます本気になるのか、それとも冷めるのか。それが怖かったの」
シュアンの語りはとまらない。いつの間にかクンも聞き入っていた。
「見てるだけでも十分な日々だった。中国に帰るのが嫌になりそうなくらい!でもそれじゃ困るから、だから、恋人がいる事知って良かった。失恋してよかった恋だと思うの・・・あーよくわかんないね、ごめんね」
わかるよ、大丈夫。女の子だもの。みんなそう思っていた。
「本当に楽しかった。彼の顔を忘れても、この4日間は忘れない。きっと・・・」
「そっかー。なんかシュアン、綺麗になったね!表情がグッと明るくなった。恋は何より1番の化粧品ね」
「えーそれってごまかしてるってこと?」
「ちがーう!女性がキレイになるための物の1つってこと!」
ジェンナンがムキになって言うんで、みんな笑った。シュアンはとてもいい笑顔になっていた。
ありがとう私の小さな恋。天使様、また舞い降りるのを待ってます・・・
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