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周建楠:13人の「時にはこんな日々」by りょう

「・・・いま、なんて言ったの?」

周建楠は一瞬自分の耳を疑った。そしてまじまじと隣の楊松梅の顔見る。

コンサート会場への移動中のバスの中、二人は隣同士で座っている。

「だってそれはジェンナンの人生でしょ。私が決めるわけにいかないわ」

ソンメイが真顔でジェンナンを見る。少し沈黙になった。

 先日ジェンナンは友達に会った。最近転職したと言う友達の話は好奇心をそそるものだった。

「自分でもびっくりよ!きっと人間には、生き方が変わる時期っていうのがあるんだわ。多分何回か」

楽しそうに語る友達を、ジェンナンはうらやましく思った。自分にはぜったい出来ない・・でも楽坊に入る前は動物のお世話をする仕事に憧れていたことがあるのを思い出した。

「楽坊に入っていなかったら・・・動物園にでもいたのかな。それも良かったのかな・・・」

そんな事を考えた次の日、突然中国の音楽プロデューサーからソロ活動の依頼を受けた。

「前回は王さんに断られましたが、今回はあなた自身の考えを教えてほしい」

その気はないのだが今回の事を王さんは、君の判断を尊重しよう、と言うのでジェンナンは戸惑った。

友達の話を聞いた後で王さんにそう言われるとは、単なる偶然とは思えなくなっていた。

・・・・私の生き方を・・・変えるチャンス・・・なのかしら??・・・

だから今、その事をソンメイに相談してたのである。

最初はジェンナンも少し微笑んで話していたが、ソンメイは真剣に聞いていた。そして

「やってみたいと思うなら、その通り動いてみたら?」

と言ったのである。その言葉にジェンナンから笑顔が消えた。

「私が楽坊からいなくなるのよ、止めないの?」

「だって止めたらジェンナンのここに居る理由が、私が引き止めたからだけになるじゃない」

「そんなわけないでしょ!私にだって夢があるわよ!十二楽坊で世界を回るっていう夢が」

「じゃあどうして迷うのよ!」

ソンメイの怒ったような言い方にジェンナンは少し顔をひいた。彼女くらいだ、こんな風に言えるのは。

 ジェンナンは一番お姉さん。気品あってしっかりしていて、みんなをうまくひっぱるリーダー的な存在。

そんなジェンナンでも疲れる時がある。でもメンバーの前ではけっして顔に出さない。出せないのである。

日本デビューして、雑誌にテレビに大忙しの頃のある日。ジェンナンは自分のメイクが早く終わったので椅子によし掛かって待っていた。連日仕事であまりに疲れていたせいか・・・ボーッとしていた。

口をちょっと開け、目はほぼ半開き、背もたれにヒジをついて顔を楽にしている状態でいた。

「ジェンナン、その顔やめたほうがいいわよ」

廖彬曲に言われてハッとする。

「疲れてるのはわかるけどさ、みんな居るのよ。楽にするのは家か家族の前だけにしなよ」

「そうね。ちょっとカッコ悪いとこ見られちゃったわね」

照れたように軽く笑ったが、ビンチュイは最後にこう言った。

「あなたは私達のお姉さんなんだから・・・いつもピシッとしててくれなきゃ困るのよ」

ジェンナンはこの言葉がつき刺さった。私は気を抜いちゃいけないの?年上だからしっかりした所しか見せちゃいけないの?ビンチュイの助言は、自分の立場というものを改めて思い知るものとなった。

それ以来、メンバーの前でボーッとすることをしなかった。いつも気をつけていた。

そんなジェンナンの苦労を理解してるのは、ソンメイである。年も近いからか1番よく話す。

「お姉さんであっても、別に気を張らなくていいのよ。少なくても私の前では・・・・」

そう言ってくれたのはソンメイだけ。説明しなくても私をわかってる。愚痴でも何でも話せる友達だった。

そのソンメイが、自分の脱退を悲しまず止めてもくれない。ジェンナンはわからなかった。

会場に着き、着替えてる時もジェンナンはずっと考えていた。

そのままステージ上の楽器の音合わせ。琴のツメを付けてる間もジェンナンの頭の中は変わらない・・

なぜソンメイはあんな事言うの・・私が間違った事してもいいの?ソロは私のいい転機になるの?

「なんか音が合わないわー。ジェンナン、そっちは?」

張爽が琵琶を抱えて後ろを振り返る。

「えっ!あっ・・・ごめんなさい、ちょっと待って」

慌てて古筝の音確認する。シュアンは怪訝な顔をした。

「・・・・・めずらしい。なんかあるわね、あれは・・・」

さすが山水コンビ。そしてシュアンの勘はよく当たるのである。

「古筝のほうは大丈夫よ。でも音響さん、ちょっといいですか?」

 そうして数時間後、コンサートは無事行われ、大盛況で幕は閉じた。

「お疲れー!今日もみんな完璧だったわね」

ジェンナンが着替え室でみんなに言う。皆それぞれ顔見合わせ微笑んでいたが、

「ジェンナンもとってもよかったわ。これならたとえ、1人になっても問題ないわね」

このソンメイの言葉で場が一瞬凍りついた。そしてみんながジェンナンを見る。

「1人ってどーゆーこと?なにそれ?」

「まさか・・・やめるとかじゃないよね・・・?」

ジェンナン!とみんなが詰め寄ってきた。突然の事態にジェンナンは困惑した。と同時にこの事を勝手にバラしたソンメイに怒りを感じた。

「ソンメイ!!ヒドイわなんでみんなに!・・・・・・・・・・ソンメイ?」

ソンメイはうずくまっていた。熱があるのだった。

「ソンメイ!大丈夫?」

ジェンナンが近寄っておでこを触ると血相を変えた。

「すごい熱!どうして黙ってたの!しっかりして!」

「ジェンナン落ち着いて!ジンジン、王さん呼んできて」

シュアンが代わりに指示をした。ジェンナンはソンメイを抱いて泣きそうになっていた。

 ソンメイが病院に運ばれたあと、ジェンナンはメンバーに責められらた。

「ずっとソンメイと一緒にいたんでしょ!どうして気づかなかったのよ!それに1人になるってどーゆー事!」

殷焱に言われ、ジェンナンはうつむいたまま、ごめんと謝り、ソロの依頼の話があり悩んでる事を話した。

「人生が変わるかもしれないと思うとちょっと・・・・」

「何言ってるのよ!十二楽坊で世界を回ろうってみんなで決めたじゃない、忘れたの?」

「そうじゃない、そうじゃないけど・・・」

「やだよ!ジェンナンがいないなんて嫌だよー!」

仲宝 が泣きながら抱きついてきた。よく見るとみんな泣いていた。

「そうだよ、やだよ・・・ジェンナンが居なくちゃ、13人で居なきゃ楽坊じゃない!」

孫婷が泣きながら言う。ジェンナンは心も頭もからっぽにして、この光景をみていた。

「私達はジェンナンより年下だけど、子供じゃないよ。人生相談だって、ソンメイだけじゃなく私達にも話して。いいアドバイス出来ないかもしれないけど、一緒に悩んであげるから。ねぇみんな?」

「もちろん。1人の悩みはみんなの悩みでしょ。私達は家族なんだから」

孫媛の言葉にジェンナンは、ようやく楽坊の中での自分の存在の必要性がわかった。

「ありがとうみんな・・・さぁもう泣きやんで。私はどこにも行かないわ。楽坊の古筝は私だけ。私の居場所はずっと楽坊なのよね。忘れるとこだった・・・ごめんなさいね、迷ったりして」

ジェンナンがみんなをあやすように謝った。それを見てみんなも微笑んだ。いつものように・・・

とそこへ、ドアが開いた。

「みんな、今病院から連絡あった。ソンメイは大丈夫だそうだ!もう心配はいらない」

王さんの報告に、良かったー!とみんな歓喜の声が上がった。ジェンナンも胸をなでおろした。

「全員じゃ多いから、私とジェンナンでこれからソンメイの所行ってみるわ!」

とシュアンはジェンナンの手を引いた。そして病院に着くと、ソンメイはベットの上で起きていた。

「二人共ありがとう。ただの風邪なの、ひどく頭痛がしてたのをずっと我慢してて・・・ごめん心配かけて」

「いいのよ無事なら。ねぇソンメイ、私決めたわ。ソロはやらない、ずっと楽坊で頑張るわ!」

「わかってたわ。だってジェンナンはいつも、私に相談する事はもう自分の中で決めてる事だもん。悩んでるって言うけど、本当は心の中で決まっていて、その判断が合ってるか聞きたいだけなのよ」

ジェンナンは驚いて言葉が出なかった。

「いつも私が同感したら喜んで、反論したら私を説得させるじゃない。この性格を知ってたから、今回の事を好きにしなって言ったの。ソロなんかやらないって心では決めていたんでしょう?」

・・・ソンメイは見抜いてたんだ。そう、私は相談する直前に決めていた。迷ってなんていなかった。行かないでって言ってくれたら自分の判断は正しいと分かるのだから。

「ジェンナンは止めて欲しかった、なのにソンメイは言ってくれないから心が迷ったのね・・・なるほど」

「やっぱりソンメイは最高だわ。こんなにも私の事をよくわかってる・・ありがとう」

微笑み見つめあう二人は、本当に心からの親友だった。

「じゃあジェンナン、ソンメイの看病は私に任せて。行っといで」

 そう言われすぐ、音楽会社のプロデューサーの所に行き、依頼を正式に断った。

「やはり王さんの反対がありましたか・・・」

「いいえ、自分で考えて決めました」 

 2日後、ソンメイが戻ってきた。みんな明るく迎え喜んだ。

「やっぱりここにいるから私は私で居られるのね・・・さぁ、みんな。練習を始めましょ!」

うんやっぱり。楽坊のお姉さんでいる事が、私には心地いい・・・


  • 2004/12/13~12/17
  • written by りょう


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