あれは幻だったんだろうか。
いや違う。確かに居たんだ、名前を呼んでくれた。そのおかげで助かったのだから。
飛行機の中で窓の外を眺めながら、蒋瑾は思いだしていた。あの出来事を・・・・
5日前、十二楽坊は新アルバムが完成したのを記念して、お忍びで日本に来ていた。
「12月になるとやっぱり日本も寒くなるねー」
「みんな、3日しかないけど風邪ひいたりしない事ね!帰ったらすぐ演奏会があるのよ」
張琨が先生っぽく話してる時、雷滢が手を上げた。
「ねぇ、今日は晴れてるから夜みんなで星を見に行かない?ニュースで聞いたんだけど、いまふたご座流星群っていうのが日本でよく見れるんだって!」
「えーそれって流れ星の大群?見たーい!」
全員一致で決まり。昼間は街でぶらぶらして、暗くなってきたら都会からちょっと離れた海岸に行った。
日本人はよく見える場所に集中してるので、ここにはあまりいなく、気付かれる事はなかった。
「ねっねっ、ジンは何をお願いする?」
クンが笑顔で隣に座って聞いてきた。
「別にー。だってたくさん流れるんだったら叶う気がしないじゃん」
「うわー夢がないなー。ちょっと聞いたぁ?」
前に座ってた孫媛に振る。彼女は笑って振り返る。
「聞いたわ。確かにね、全部叶うとは考えにくいかも」
「だめだって二人とも。たくさんお願いすればどれかは叶うよ!お金持ちになりたいとかさー」
「あーそれだったら百回お願いしても無理だわ」
馬菁菁がケタケタ笑って言う。クンがもー!と叫ぶとみんな笑った。そうして時間がたっていった。
やっと外は真っ暗になり、星がきれいに見えるようになった。
「きれい!こんなにたくさん・・・・久しぶりだなぁ」
ジンは小さいころから星を見るのが好きだった。みんなも同じらしく、静かに星空に見入ってた。
「きれいだねー・・・・あ、流れ星!」
とクンが言ってからは、もうみんな大騒ぎ。見れたとか見れなかったとかキャアキャア言って楽しんでいた。
「次見つけたらお願いごとしなきゃ。もう決めてあるの」
廖彬曲が両手を組んで星を見つめる。ジンもだんだんその気になってきた。
「あっ、みっけ!・・・楽坊が世界に飛躍しますように。またみっけ!素敵な恋人ができますように・・・」
たくさんの流れ星に、願ったりおしゃべりしたり感動したり、思い思いの時間が過ぎた。
「じゃあみんな、そろそろ夜も遅いし。最後に1つお願い事して帰りましょうか」
周建楠が立ち上がって言う。そしてみんなで星空を見て目をつぶった。
「最後の願い事。私なら・・・・・・・」
ジンもみんなも、微笑んでいた。
次の日、ユエンがどうしても行きたいと言うので、みんなで京都のお寺巡りに行った。
彼女の寺院好きはメンバー公認。ちゃんと地図を用意してあり調べたのか迷うことなく回れた。
「あぁ、ここはいいですね。広いのにとても落ち着く・・・」
ユエンの優しい声と表情で満喫しているのがわかる、ジンはそんな彼女といるせいか退屈しなかった。
途中でお茶をしていると、ジンジンが行きたい所があると言うので複数に別れて行動することにした。ジンはお寺巡りが面白く感じてたので、ユエン達グループについた。
「じゃあ、夕方5時に待ち合わせしましょう。ここのバス停でいいね。車通りも少ないし」
そう決めてそれぞれ歩き出した。ジンはリーチュン、レイ、ユエン、ビンチュイと一緒だった。
「ここのお寺はとても古いと聞いたけど・・・けっこうきれいだね」
ユエンがしみじみ言う。もうこれでどれくらい回ったろう。あれからかなりの時間がたっていた。
「ちょっと疲れたな、ここ座る場所だよね?休んでるわ」
ジンが座るとビンチュイも座った。3人は、あの建物の中を見てくると行ってしまった。
「ねぇ、ジンは星に願った事がかなったことがある?」
「うーん。ないわけではないよ、だって楽坊に入れたんだもん」
「それは私も一緒よ。そうじゃなくて、自分だけの密かな願い事。叶ったことある?」
「難しい質問だなぁ。うーん・・・安全や健康の願いなら叶ってるかな。一体どうしたの?」
「私小さい頃から星にお願い事してるけど、ほとんど叶った事がないの。片思いが実らなかったり、コンクールではライバルに負けたりと・・でもね、願わない事なら叶うのよ」
「うん?なんかよくわからないんだけど・・・」
「星に願ったりしないで、自分で努力したほうが実るのよ。だから思ったわ、あれは気休めだって」
「それは違うでしょー。本気でお願いすれば奇跡がおこって夢が叶う人だっているわ」
「それはきっと努力の積み重ねが報われたのよ。私は思うわ。夢は自分の努力次第!お星様に頼ったってだめなのよー。非現実的なお願い事ならますますね」
「昨日楽しんでたじゃない!私は本気でお願いしたよ。叶うかどうかは自信ないけど・・・」
「あれはあの時だけよ。素に戻れば、奇跡なんてそうそう無いってわかる」
「わかんないよ。生きていればいつかきっと・・・奇跡がおきる!・・・・かもしれないじゃん」
ジンが足元に目をやる。何も言わずにつまさきでマルを描き始めると3人が戻ってきた。
お寺を出るとすぐ、前から「みんなー!」とシュアンが声をあげてこっちに走ってきた。
「ねー、ジンジン見なかった?いないの、いなくなっちゃったの!」
「えぇ!一緒にいたんじゃなかったの?」
「居たんだけど・・・気づいたらいなくなってて。もう集合時間だよね?変だよね!」
「落ち着いて。とりあえず、集合場所に行こう。来てるかもしれないし」
ジンは不安そうな顔してるシュアンの手をひっぱって、バス停に行った。そこにはバオ、クン、ティン、ジンジン以外はみんないた。
「バオ達はちょっと遅れるかもってさっき言ってたわ。ジンジン・・・やっぱりいなかった?」
イエンがシュアンに聞く。シュアンは泣きそうな顔になっていた。
「いないの。時間過ぎてるのに・・・どうしよう、なんかあったのかな?
どうしよ!」
「シュアン、あせったって仕方ないわ。手分けして探しましょう!」
そうジェンナンが言うとシュアンはすぐ走って行った。ジンはちょっと!と言って追いかけた。
「待ってよシュアン!適当に探したってダメ・・・・・・わっ!」
急にシュアンが立ち止まったので、おっとっととジンは通り過ぎるとこだった。
「ママ・・・」
「えっ・・・どうしたシュアン?」
「ママだ!向こうにママがいる!ママ!」
「危ない飛び出しちゃダメ!!」
走ってきた車がブブー!と音を鳴らした。
その途端・・・・ジンはグイッと強く腕を引っ張られた。驚いて振り返るとジンは目を見開いた!
「大丈夫か?ジン」
「えっ・・・!お父さん・・・・・・・・・・・?」
ブブー!と大きな車のクラクションで気がついた。
車は走り去って行った。シュアンはジェンナンに抱き包まれていた。
「バカ!走ってくる車に気づかないなんて!」
「離して!ママが、ママがいるんだもん!・・・・あっ・・・」
もう誰もいなかった。シュアンはその場で泣き崩れた。
「いたの!ほんとにいたんだもん!ママがこっち見てたの・・・・・」
ジェンナンは何も言わず、しゃがんでシュアンを強く抱きしめた。
ジンはボウ然としていた。今自分がみたものが信じられなかった。なぜ父さんが・・・?
目撃していたメンバーは真っ青だった。もう少しで事故になったかと思うと恐ろしかった。
「3人共・・・無事なのね!よかった・・・びっくりした・・車に引かれたらどうしようかと思ったよ・・・・」
と言うとリーチュンも泣き始め、レイがなだめた。イエンとソンメイは気がぬけたようにベンチに座り込む。
ビンチュイは出来事が理解できず、ユエンは両手を合わせ3人が無事であったことを仏様に感謝していた
そんな状況の中、バオ、クン、ティンが戻ってきた。
「おーい道路にいたら危ないよ。・・・・・・えっ、どうしたのみんな?」
見渡してバオが困惑しながらそう言うと、ジンジンがおいしそうに大福を食べながら戻ってきた。
「ごめーん遅くなって。地元の子供に手引っ張られちゃってさ、着いた所が和菓子屋さんで・・・ん?」
バオ達以外は誰も聞いていない。なんだこの光景は?みんなぐったりしたり、泣いてる人もいる。
ジンジンはあきらかに今の自分の姿が場違いであることに気づき、ちょっと焦った・・・・。
その後はみんな無言でホテルに帰って行った。
ジンはちょっと心配になり、夜こっそり自宅に国際電話をかけに行った。
「もしもし、お母さん?いやまだ日本なんだけどさ・・・お父さんは元気だよね?」
「もちろんよ。でもね家にいないのよ。会社の人と旅行に行っててね・・どこだか知りたい?フフフ」
まさか日本にいるの?母の笑いからそんな気がした。でもあえて聞かなかった。
「いや、いいよ。帰ったらおみやげ期待してるって言っておいて」
母に電話してよかった。自分の中で答えがみつかったのだから・・・
部屋に戻るとメンバーのみんないた。同室のビンチュイが入れたんだろう。
「おじゃましてまーす!ごめんね大勢で」
「シュアンとリーチュンは泣き疲れて寝てるわ。ジンは・・・落ち着いた?」
「うん、ご飯食べたらもう大丈夫よ、アハハ」
「あのさ、どうしても気になってるんだけど。あの時シュアンと一緒に道路に飛び出したよね、でもジェンナンが助けたのはシュアンだけ・・ジンはどうやって助かったの?ごめん思い出したくないならいいけど・・」
「平気だよ。あの時私は寸前で腕を引っ張られたんだ。お父さんに!」
は?みたいな顔をする一同。でも話を続ける。
「あれは間違いなくお父さんだった。声もぬくもりも表情も同じだった。昔から毎日私の安全を祈ってる人だから、その思いが一瞬の分身となって私を助けてくれたんだ。きっとお父さんに守られてるんだよ私」
ジンは堂々と言ったが、ジンジンが理解できない顔をした。
「ジンまで何を言ってるの?シュアンもあんなこと言って・・・ありえないわよ」
「わかんないけど、奇跡ってあると思うよ。全然怖くない。むしろ暖かい感じがしたもの」
「でもシュアンのお母さんは!もう・・・・・・」
数年前に亡くなっている。みんな分かっていた。だから誰もシュアンに問いかけることはしなかった。
「きっと、お星様が・・・・・叶えてくれたんだ。会いたいって願いを・・・・」
次の日、ホテルのロビーでみんなを待っていた。そろってからチェックアウトするためだった。
「ねぇ、ジン。私ゆうべ考えたんだけど・・・星に願い事すると本当に叶うこともあるのね」
「そうだよ。私海岸で最後に願ったことは”お父さんに会いたい”だったの。あんな形だったけど叶った!」
「そっか・・・・ジンが助かったのは奇跡。そんなのあるわけないって決め付けてた、夢みたいな話を信じられない心の狭い人間になってたわ私・・・ジンに教えられたような。ありがとね!」
「優等生もたまには星に願いをかけてもいいんじゃないかな。そんな気がしただけだよ」
ジンが照れ笑いしてるとシュアンが走ってきた。みんなも一緒だった。
「ジン!昨日はありがとう!気づいたの、ジンがいなかったら私・・・」
「なにいってんの、お礼を言うならジェンナンにでしょ。私のほうこそありがと、あーなったから会えた・・・」
ジンは片目をつぶりながら親指を立てクイクイとジェンナンを指す。シュアンは笑ってそちらへ行った。
願いが叶った後の人間って、とても明るくハツラツとしててかっこいい人になる。そうビンチュイは思った。
「みんな、終わったわ行きましょ。中国帰ったらすぐ演奏会よ!」
クンの言葉に、そっか頑張らなくっちゃと思いながら歩いているとジェンナンが隣にきた。
「ジン、一言言わせて。あの時ごめんね、シュアンだけで・・・」
「なに?済んだことは気にしないでよー」
「・・・そうね、ありがとう。いつかジンのお父様にお礼言わなきゃね、あの時私の代わりにジンを守ってくださってありがとうございましたって」
「ハハハ、じゃ今度うちにくる?ごちそうするよ!」
ジンは本当に明るく気分がすっきりしていた。と同時にこの先にワクワクしていた。
願いが叶うって素敵だな、今度は何を星に祈ろうか・・・・楽しいな!
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[No.1] 投稿者:[2006年02月22日 21:14]
とても感動しました。涙なしでは読めませんでした。
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