楽坊帝国英雄列伝 天翔大軍師・百戦百勝の馬菁菁 by 朝霧
軍務尚書馬菁菁は「天翔大軍師」の称号を持つ、しかし一般には「天衣無縫の大軍師」「百戦百勝の馬菁菁」と呼ばれる。
統一戦争において彼女の最大の功績は二正面作戦を提言し、それを勝利に導いたことである。「戦略上の愚これに極まる」とまでいわれる二正面を敢えて行い勝利する、この閃きと果断な実行力こそ彼女の真骨頂である。
「馬菁菁の五光」と呼ばれる彼女を代表する五つの作戦、その白眉は二正面の左翼を担った汝南攻略戦であると云われる。詹麗君、レイ・イン、後に王鵬、王虎と尊称される二人を率い疾風怒濤の攻めを展開し味方の予測すら超える速さで汝南を攻め落とした攻城戦の巧みさ、更に救援に駆けつけた敵の大部隊を十面埋伏の計で殲滅させてしまう。野戦の用意周到さはまさに神算鬼謀というしかなく、楽坊軍に馬菁菁あり、と広く世に知らしめた戦いであった。
ちなみに馬菁菁が王鵬、王虎の両名を自らの作戦の主戦として起用するのはこれが最初であり、これより後ほとんどの作戦が二人に任される、もとよりそれは蒋瑾、イン・イェンより優先したわけではなく、太祖と楊松梅がそれぞれの為人を見極めて判断したことである。
「百戦百勝の馬菁菁」彼女の知略は楽坊軍にあってこそ無限の翼を羽ばたかせることができるのか、それとも楽坊軍の比類無き戦闘力こそ馬菁菁の知略を得て初めて本領を発揮できるのか。馬菁菁はなぜかこのように語られることが多い、その最たるもの。
「必勝不敗と百戦百勝はどちらが優れたるか」
二人に競い合う意識などまるでなく、お互いを補い合える得難い存在として認め合い、一日でも早く戦争を終わらせようと協力していたのであるが。非常に美しく、ふと見せる憂い顔は伝説の美女、西施を彷彿させ、憧れを抱くものは数知れない馬菁菁だが、
「王宮を歩くその姿の堂々たるや太祖をも凌ぐ」
と評される彼女の自負の壁を越えたものは知られていない。
馬菁菁と張爽は大変仲が良くその様は“管鮑の交わりより強い馬張の交わり”と称えられる、しかし統一後彼女たちの名前の前に軍務尚書、国務尚書の肩書きが付くようになると以前のように杯を交わし語り合うなど頻繁にできようはずもなく、それに関しては二人とも大いに不満であったが、それで二人の仲が疎遠になる訳でなく、頻繁にお互いの近況を交換していた。
そのような二人だからこその役職である、少なくとも両名をそれぞれの役職に推薦した楊松梅の考えはそうであった。
楊松梅が王宮を去った日、馬菁菁は遠くで見送りながら思いを言葉にする、去りゆくその後ろ姿に、伝えたくて最後まで伝えられなかった思いを、
「貴女が信じるとおり、貴女の音楽を必要としている場所はきっとある、でも、それでも、貴女の音楽が一番似合う場所は楽坊なんだよ。」
張爽はこの日初めて馬菁菁の涙を見た。
「天衣無縫の大軍師」、戦乱の世であればこそ彼女は軍師であった、平和な時代であれば彼女は何者であったのか、
「宮廷伎楽団の首席奏者、もしくは街で子供に音楽を教えている美人先生、
どちらか気が向いた方ね。」
-2004/12/20
-written by 朝霧
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