女子十二楽坊資料館 |HOME|資料集|ニュース|ブログ|掲示板|

女子十二楽坊ブログ

女子十二楽坊資料館HOME > ブログ一覧 > 創作板:13人の「時にはこんな日々」 > この記事

張琨:13人の「時にはこんな日々」by りょう

「やったーまた私が1番!」

両手をあげて張琨が喜ぶ。これで3連勝だ。

「もう、クンったらソンメイに聞くんだもん。ずるいわ」

「だってこれも作戦だもん」

移動中のバスの中は盛り上がっていた。6人でトランプしていて、あとのメンバーは周りで見ている。

「やっぱり1番っていいねーオホホ」

「なにがオホホよ。聞いてたくせに。もう一回やろう!」

殷焱が不満そうに言う。クンの連勝は背もたれに乗って見てた楊松梅に目で教えてもらっていたからだ。

「もう着くわよ。みんな降りる準備しよう」

馬菁菁が言うと片付け始めた。これからコンサートだった。

 クンは最近、『1番』にこだわっている。

バスの乗り降りも、会場に入る時も、みんなで並んで歩く時も1番先頭でなければ嫌だった。

「なんか、私が楽坊の代表って感じでかっこいいじゃない!」

とメンバーには説明してるが、信号待ちしてて青になったら1番先に歩き始めるようにしていたりと、楽坊とは関係ない時まで1番にこだわっている。性格もあるが、これには理由もあった。

 この前久々の休みの日、昼間は友達と会って、夜は親戚が集まって夕飯だった。

友達は、クンの事を1番自慢できる友達、1番尊敬する友達と褒めてばかりだった。夜も親類は全員、クンが1番優秀で美人な子だと褒めてばかり。ここまで言われると、謙虚な気持ちも薄れていく。

それですっかりクンは、1番という快感にハマってしまったのである。有名人によくある事だ。

そんなある日、練習所に行く途中クンは久々に音楽教室通りを歩いてみた。

ここは小音楽楽団や学校の練習生、習い事として来てる人達が自由に使える教室がずらっと並んでいる所だった。お金を払えば誰でも使える所だ。たまにプロの人も使うことがある。

「学生のころよく利用してたっけ・・・横入りされた事も・・・大雑把な所だよまったく」

クンが独り言を言って歩いて行くと、前から琵琶ケースを持った女の子が泣きながら歩いてきた。

「・・・・大丈夫?」

「あ、すいません・・・いま家に帰る所なんです。本当は練習したかったのに・・・」

「できないの?どうして?話聞いてあげるよ、私急いでないから」

「ありがとうございます。グスッ・・・取られちゃったんです、ここの1部屋。お金払った後なのに・・年上なんですその人達・・・私達のほうが上手いのだから下手な人は譲るべきよって言われて・・・」

「ひどーい!お世話になった人じゃないんでしょ?対抗すればよかったじゃない!」

「私も友達も立ち向かうほどの楽器の技術持ってないから・・・もうすぐ発表会なのにどうしよう・・」

少女は顔を両手で覆って泣いた。実力社会がこんな所にまで来てる事にクンは腹立たしくなった。

「ちょっと連れてって!その人達がいる所へ!文句言ってあげるわ」

そして少女の使うはずだった教室に行き小窓から覗くと、そこには三人の女の子が悠々と使っていた。

「三人とも琵琶か・・・どれだけ上手いか聞いてあげようじゃないの。よぉし・・」

中に入ろうとした時、携帯電話が鳴った。聞こえないようすぐに取る。

「もしもし・・・あ、バオ。えっ、もうそんな時間!あーごめんすぐ行くわ。うん・・・わかったわじゃあね」

切った後少女の顔を見たが、名前をだしても気づいてない。十二楽坊のことは知らないようだ。

「あの・・・ごめん。私楽団に入ってて・・・」

「いいんです。明日もここに来ますから・・・多分使えると思います・・・」

自信なさげに言う少女を、クンは不安な目で見ていた。

「それ、クンは入らないほうがいいわよ」

練習を数時間やって休憩になった時、メンバーにさっきの事を話していた。

「どうして?実力で威張る子にはガツッと叱るべきよ」

「あなたが十二楽坊の人だってわかったら大変よ。ケンカ売られただとかで訴えられたらどうするの?」

周建楠に言われてクンは黙った。あの時自分の立場を考えていなかった事に気がついた。

「もし琵琶で対抗するにしてもあなたはプロなのよ。勝てるわけないって言われたらどうする気?」

「そうだけど・・・でもかわいそうじゃない!」

「プロはアマや学生の争い事に入ってはいけないよ。気を付けな」

張爽に釘をさされた。クンは言葉が出ない。そして練習か再開した。

 次の日の夕方、クンはどうしても気になったので、少女が来ると聞かされていた時間に行ってみた。

あちこち部屋を見て探すと、かん高い声がした。ドアが半分開いてたせいで中の声がまる聞こえだった。

覗いてみると昨日の少女がいた。他の4人の仲間と一緒に、下を向いていた。説教されてる感じだった

「あんた達が練習したって無駄なのよ!ここは今から私達が使うわ。早く出ていってよ!」

「そんなぁ・・・さっきも譲ったじゃないですか・・・・順番待ちしてやっと入れた部屋なのに・・・」

「何よ。私より琵琶うまく弾けないくせにはむかうの?あなた1ランク下の生徒じゃない!」

3人の真ん中に立ってる女の子がどうやらリーダーらしい。腕をくんで怖い顔で言っている。

仕方なくぞろぞろと少女達は部屋をでる。みんな気弱そうな子達で泣いていた。

「悔しかったら私より上手く弾ける人を入れてみなさいよ!」

バン!とドアを閉めた。外ではクンはこぶしを強く握って立っていた。少女がクンに気づく。

「待ってなさいね。私がぜったいなんとかしてあげるから」

どうしたらいいんだろう・・・とにかくこの子達ばかりに威張って邪魔をするなんて私が許さないわ!

その夜、クンは料理店でジンジンとシュアンとイエンに見た事を話した。

「まったく!威張りすぎよあの子!もうかわいそうで」

クンはもうすっかりキレていた。それを見てジンジンが言う。

「あーあ。これはもう、やるっきゃないわね」

「そうね。もう動きなよクン。プロにはプロなりの説教の仕方があるでしょう」

イエンとジンジンは腕を組んでクンを見つめた。それで意味がわかった、説教の仕方が。

「そうか・・・本物を教えてあげるのね・・・・・・ごめん、私の分ツケといて、行くわ!」

「ここは私のおごりよ。頑張ってね!」

シュアンの応援でうまく行くような気がした。あわてて席を離れると、急にイエンが立った。

「ちょっと待って!クン」

「なに?早くね」

「言っとくけど、人助けにミスは許されないわよ」

イエンがキリッとした顔で言う。それには無言でうなずいた。・・・・ミスは許されない・・・・・

 クンは自分の琵琶の先生の所をたずねた。先生はクンの急な訪問と真剣な表情に驚いた。

「どうしたんだ?何かあったのかい?」

「先生!お願いがあります!あの曲を・・昔私に電流を走らせたあの曲の弾き方を教えてください!」

先生はクンの真剣なまなざしを見ると何も言わず、琵琶を出しなさいと言った。クンがようやく笑った。

琵琶の練習は一晩中続いた。家に帰ってからもずっと、練習して練習して練習して・・・・・・

 次の日、クンは楽坊の練習所の入り口前で梁剣峰先生に頼んでいた。

「お願いします!1時間で戻ってきますから!行かなきゃならない所があるんです!」

「自分だけ1時間遅く入るなんて気持ちがたるんでるぞ、入りなさい」

「先生!クンに行かせてあげてください」

お願いします、お願いしますとメンバーがぞろぞろやってきて、クンの代わりに頼み込んだ。

「なんだなんかあるのか?・・・・ハァ、今回だけだぞ、行きなさい」

クンはお礼を言って走って行った。聞いてた時間には間に合い、少女達がお金を払って入る所をちょうど捕まえた。少女は走ってきたクンに驚いていたが、クンは構わず話し始めた。

「みんな聞いて。もうあの人達に命令させないわ。私があなた達の味方をするから!よく聞いてね」

5人の少女はクンの名前を聞こうともせず、ただ言われた事に素直に同意した。

 それから5分もしないうちに、あの3人がやってきた。

「見つけたわ。さっ、今日も私達に譲りな。出て行って!」

「いっ・・・いやです。もういやです!」

「なんですって?下手な見習いが生意気よ。逆らうなら弾いてみなさいよ、出来ないくせに!」

その時、ポロンとクンが琵琶を鳴らした。椅子に座って帽子を深くかぶっているので顔が見えない。

「誰?新しい人?私に琵琶で対抗しようとしてるの。面白いわね、弾いてごらんなさいよ!」

その言葉をスタートにクンは弾き始めた。それはプロでも力加減が難しく難易度がとても高い曲だった。

・・・・素晴らしかった!クンは一心不乱に演奏する。それは聞いてる者の体を、竜が巻きついたかのように動かなくさせ、口を閉じるのさえ忘れさせる演奏だった。全員抜け殻状態で立っていた・・・・

 曲が終わっても誰も拍手しなかった。出来ないのだ、すごいと言って手を叩く程度のものでは無いからだ。天才琵琶奏者なのだろうか、そう思ってもおかしくないと言えるものだった。

「次はあなたの番よ。どうぞ弾いてくださいよ!」言ったのはあの少女だった。

言われたいじわるな女の子は泣きそうな顔になった。無理だ、とても対抗できない。

クンは立ち上がり、帽子の下からキツイ目で言った。

「世の中上には上がいる事を覚えときなさい」

3人は下を向いた。完全に反省しているのがよくわかった。

「・・・・・・ごめんなさい。もうしません・・・」

そう言うと、下を向いたままスゴスゴと部屋を出て行った。5人がワァ!と細い声で喜び始めた。

クンはそれを見て安心し、何も言わずに部屋を出て走った。約束は1時間以内だからだ。

教室通りを抜けるとちょうど信号にひっかかった。そこで琵琶をきちんとしまっている時少女が追ってきた。

「ハァハァ。あの、ありがとうございました!あなたはひょっとして女子十二楽坊の張琨ではないですか?」

「なんだ知ってたんだ。この事はお友達には内緒よ。あの3人にもよ。そしてもう負けちゃだめだからね」

「やっぱり!昨日雑誌みて気づいたんです。でも信じられなくて聞けませんでした。はい、もっと練習してあの人達を抜かすくらい上手くなります!クンさん、この事は一生忘れません。ありがとうございました」

「あなたけっこう強い所あるわ。弾いてよって私が言おうとしたのに・・成長したね。発表会頑張って!」

じゃあと手をあげて信号を渡っていると、後ろで少女が両手を口につけ叫んだ。

「私、クンさんを1番尊敬する人と思って生きて行きます!」

クンは立ち止まった。1番・・・違う。少し考えるとクンは少女の所に戻ってきた。肩をつかんで言う。

「違うでしょ。1番は両親、2番は先生、私は3番か4番でいいのよ。じゃ、また会えるといいね!」

そう言って急いで信号を渡る。向こうで大きく手を振る少女に、クンは笑顔で振り返し走って行った。

あれは素直な言葉だった。1番じゃなくていい。あの曲が弾けたのは先生とメンバー、そしてこんなにも私を本気にさせたあの8人の少女達のおかげだ。そうみんなのおかげ・・だから私はえらくないんだ・・・

 数時間後のお昼休憩。話題はもちろん、クンのヒーローぶりだ。

「・・・というわけで、一件落着しました!みんな協力ありがとうね」

「よかったわね。でもなんでその難しい曲にしたの?自分の得意な曲にすればよかったのに」

「あれだけ自分の実力を自慢する子だから、本当にすごい才能をもってるのかもしれないでしょ。だからプロが聞いても身震いするような、演奏する気を失せさせる曲を弾きたかったの」

そのために寝ないで一晩中練習した事、クンの目の下のクマと指先のひどさでみんなわかっていた。

「クン、今回の一件で何かわかったことはある?」

ジェンナンの質問にクンは悩まず答えられた。

「あるわ。もう1番はやめる!」

エーッとみんな驚いた。なぜなら今までクンがハマった事は最低2ヶ月以上は続いているのだから。

「だって1番って言うけど本当の1番じゃないもの。自分の世界の1番なんだってわかった。私はあの子に1番と言われたけど・・・いや違うからって思った。私の力じゃなく先生とその曲のおかげだもの・・・」

クンは手を止めて話した。ちょっと寂しそうだった。ジェンナンがまとめる。

「つまり納得できない1番をもらったら、急にその勲章が意味なく思えてきたのね」

「そう。1番になりたくて助けたんじゃないし。だから本当に自分に必要な物ってわけじゃないと思ったの」

「よく気づいたわね!そう難しいのよ順番って。すごいと思われる時と、無意味と思われる時がある」

「スポーツとか永遠に記録に残る1番なら素敵なのにね。1番早く起きたとか、だから何って感じよね」

「そうよ!そのために私達、世界に一つだけの花を弾いているんじゃない。NO.1じゃなくてもいいって・・」

ソンメイの言葉にそうだったーと言ってみんなおしゃべりし始めた。クンも納得して一緒に笑った。

なりたいものは1番じゃない。心がかっこいい演奏家かな!それが私の意味のある生き方。


  • 2005/01/04~01/06
  • written by りょう


コメントとトラックバック

[No.1] トラックバック:「msn plus free download college」(msn plus free download college girls nude recipes for)[2006年06月01日 07:56]

[No.2] 投稿者:viagra[2006年08月09日 04:19]

viagra - viagra
When one burns one's bridges, what a very nice fire it makes.
-- Dylan Thomas

トラックバック(参照元逆リンク)用URL

http://www.twelve-girls-band.info/mt/mt-tb.cgi/510

この記事へトラックバックする場合は、このトラックバック用URLを、あなたのウェブログ等の投稿ページの「トラックバック先のURL」欄に入れて更新してください。参照:3分でわかるトラックバック

コメント(ご意見・ご感想)を投稿する

名前、アドレスを登録しますか?
 

この記事について
前後の記事
関連記事
表紙
おすすめ!
Merry Christmas To You
Merry Christmas To You
購入はこちらから


日本公演2005
Romantic Energy
女子十二楽坊 日本公演2005 ~ Romantic Energy ~ (仮)
購入はこちらから


THE BEST OF COVERS
女子十二楽坊 ~THE BEST OF COVERS~ (仮)
購入はこちらから
一覧 Backnumber
月別 Monthly
検索


Powered by
Movable Type 3.2-ja-2