気持ちのいい朝だった。
日差しが眩しくて、スズメがチュンチュン鳴いていて、街がきれいに見えていた。
廖彬曲はカーテンを開けしばらく外を眺めていた。雨続きだったからこんなに晴れた空を見るのは久しぶりだ。今日の集合時間は少し遅いから、近くの公園まで散歩に行こう。
気分良く歩いて広い公園につくと、ベンチに座って竹笛をだした。最近はどこに行くにも持っている。
吹いてると、ビンチュイの隣に1羽のハトがきた。聞いているのかなかなか飛んでいかない。その時、ピーと子笛の音がした。ハトは聞こえてないがビンチュイには聞こえた。だから吹くのを止めるとまた鳴った。
するとハトは笛の元へ飛んで行った。目で追うと、吹いたのはおじいさんだった。そしてこっちに来る。
「やぁすいませんね・・・あなたのお邪魔をしてしまって」
「いえ、いいんです」
「この子は人見知りするのですが・・・どうやらあなたの笛の音が気に入ったようだ・・・」
おじいさんはハトをなでながら話す。よく見るとそのハトには小さい鈴がかけられていた。
「あなたの目と演奏をで、心の優しいお方と見える。どうだろう、1つ私の頼みを聞いてくれませんか?」
「ハァ・・・・私にできることでしたら・・・」
「この子をしばらく預かって欲しいんだ」
えっ、と思った。ハトは苦手ではないが、飼った事がない。私は仕事柄いつも家にいるわけではないし・・
「私は行かなくてはならない所があってね・・・そこには連れていけないのだよ・・・きいてくれるかね?」
「・・・・・ハイ。分かりました、お預かりします」
断れなかった。おじいさんの目が寂しそうに見えたから。そしてビンチュイはハトの面倒を見る事にした。
ビンチュイは言われるがままにハトをもらい、おじいさんと別れた後、歩きながら考えた。
「なんでこうなるのかしら・・・散歩しに来たのに・・・」
「まったくお人好しねぇ、ビンチュイは」
孫媛が笑って言う。楽屋でビンチュイが朝の事をメンバーに話した時だった。
「だってなんだか可哀そうで・・・他に誰もいないようだったし」
「そのおじいさん家族いないのかな?他人に頼むなんて」
蒋瑾が不思議そうな顔でお菓子を食べながらきいてくる。さっきからポリポリとうるさい。
「さぁ・・・とりあえず住所と名前が書いた紙はもらったから。怪しい人ではないようだし」
「でもさ、あさってからコンサートで北京を離れるのよ。しばらく帰れないのにどうするの?」
「連れて行くしかないわ。ねー、この中で鳥アレルギーの人いる?」
メンバーを見渡したが誰も手をあげない。ビンチュイは安心した。ジンが言う。
「今日連れてくればよかったじゃん。お世話は協力してあげるよ」
「ありがとう。苦手な人いないかどうか聞いてからじゃないと連れてこれないわよ」
「ハトって頭いいんでしょ?伝書鳩っているくらいだからね」
馬菁菁がジンのお菓子をつまみ食いにやってきた。二人でポリポリしながら会話が弾む。
「手紙がいいなぁ。ちょっと書いてみようかな。ビンチュイ貸してね」
「あとさ、頭いいから芸でも教えちゃおうか。笛の音に合わせて首で踊ったりとかさ。アハ」
「あーそれかわいいかもー!見たいね」
「二人ともお菓子はもうだめ!」
と張爽に取り上げられて、お腹が空いてるの!と抗議する二人。これを見てビンチュイは不安になった。
「なんか・・・みんなに任せて大丈夫かな・・・何事もなく返せるといいんだけど・・・」
しかしその不安は見事に的中し、大変な事になってしまうのである。
次の日、ビンチュイはハトを鳥かごにいれて持ってきた。
「かわいい!名前なんて言うの?」
「ポッポって言うの。みんなよろしくね。笛をふいたら必ず戻ってくるお利口さんなのよ」
みんなで囲んでかごの扉を開けたが、ポッポは本当に人見知りらしく出てこなかった。でもビンチュイが遠くから笛を吹くと、バタバタと飛んできた。みんながおーと拍手する。
「すっかりビンちゃんに慣れたんだねこの子」
孫婷がポッポを見て言う。ちょっと鳥独特のにおいは確かにするが、みんな嫌がらず可愛がってくれた。
その後コンサートで杭州に移動したりと、北京を離れたがポッポは暴れることなく大人しかった。違う地でたまに離してやることもあったが、笛の音でちゃんと戻ってくる、いい子だった。えさもみんなであげた。
そうして2週間近くたった頃、北京で昼の部のみコンサートだった。
「そろそろ連絡きてもいいのにね。おじいさんどこにいるんだろう」
張琨がメイクしながら話しかけてきた。ビンチュイも気になっていた。
「多分もうすぐ来ると思うわよ。でもそうなると、なんだかちょっと寂しい気持ちだわ・・・」
「そうね。もうビンチュイのペットみたいだもんね」
本当にそう思う。毎日一緒にいるから、自分のもののような感覚になってきた。預かってるだけなのに。
リハーサルの時間。順調に進んでいたが終わり頃、突然キーン!と音が響き、みんなビックリして止まった
「すいませーん!音響トラブルです!」
スタッフが慌しく動き、梁剣峰先生が楽坊に説明する。
「みんな悪いがこのまま待機しててくれ。楽屋に戻っててもいいぞ」
みんなトイレに行ったり、化粧直ししに戻ったり、動かず練習したりバラバラに動いた。
そんな中、ビンチュイが頭を抑えていた。さっきの音が耳と頭にかなり響いて頭痛になったのだ。
「どうしよう・・・本番近いのに・・・具合が悪くなってきた・・・」
お手洗いから出たビンチュイはため息をついた。頭痛がやまない。
「薬・・・あったかな。かばんの中探してみよう」
楽屋のドアを開けると笑い声が急に止まった。
「あ!ビンチュイ!」
中にいた数人のメンバーがビクッとする。ビンチュイが正面を見るとジンと仲宝が鳥かごを開けていた。
「あっ、ちょっと何してるの!」
「いやーちょっとねー・・・・別に遊んでただけよね?バオ」
とジンが言って後ずさりした直後、ガタンと鳥かごが倒れびっくりしたポッポは外に飛び出てしまった!
「あーポッポ!なんで窓開けてたのよ!戻っておいでー」
ビンチュイが急いで窓から叫んだがポッポはそのまま飛んでいる。
「笛吹かなきゃダメだよ、早く!」
「今持ってるわけないでしょ!舞台にあるわ。もー・・走って取ってきて間に合うかな・・・」
「お待たせしましたー!リハーサル再開します!」
「えー!!」
みんな顔合わせて叫んだ。なんというタイミングの悪さ。迎えにきたスタッフは戸惑った。
「ビンチュイどうしよ・・・少し時間もらう?」
バオが顔色うかがうように聞いてきた。ビンチュイはうなりながら目を泳がせていたが決めた。
「いや、ただでさえリハ遅れているのに時間とったら本番に間に合わないわ。行きましょう!」
さすがプロだ、何があっても仕事を優先させる。バオ達も無言になり反対しなかった。
ポッポの姿はもう見えない。どこに行ってしまったのか・・でも今はファンのためにも行かなくてはならない。
コンサート中ビンチュイはずっと頭が痛かった。さっき薬を飲み損ねたからだ。
だが『山水』の時に裏で我慢できなくなって薬をもらって飲んだ。その時バオとジンがやってきた。
「ビンチュイさっきはごめん。ちょっと驚かそうとしてポッポと遊んでたんだ。あんな事になってごめんね」
「いいのよ、逃げちゃったものは仕方ないわ。その代わり、一緒に探してもらうわよ」
無事にコンサートが終わり、着替えの時知らなかったメンバーに話しみんなで探してもらうことになった。
「でも・・・鳥でしょ。人と違って適当に探し回って見つけられるものかしら?」
「考えよう、ポッポの行きそうな所。たしか・・・ハトって集まる習性あるわよね。そこに行けばいるかも!」
雷滢の意見にみんな納得した。そこにジンが水をさす。
「でもあの子は人見知りするんじゃなかった?」
「人はだめでも仲間なら大丈夫でしょー」
「そだね。ハト見知りするハトなんていないか、アハハ」
みんなもおかしそうに笑う。それを見てちょっと怒るビンチュイ。
「みんな事の重大性がわかってないわね。もういい、1人で探すわ」
「あーごめんごめん!冗談だってばビンチュイー」
ねっ、みんなでご機嫌をとる。こんな時でも普段の楽坊らしさは変わらない・・・
ともあれ、ハトがよく集まる噴水公園にみんなで行ってみる事にした。ハトが数十羽いたので、そこでビンチュイは笛を吹いてみたがどのハトも無反応だった。
「だめかーここだと思ったのにな。あとどこかしら?」
その時見知らぬおじさんがシュアンに話しかけてきた。
「お姉ちゃん達ハトをお探しか?それなら町外れの湖畔公園に行くといい。うじゃうじゃいるよ!ハハ」
最後の言葉にメンバー全員嫌な予感がした。が行くしかない。だってあれは預かり物なのだから。
湖畔公園についた。でもハトはいない。少し湖の周りを歩くことにした。
「いないわねーたくさんいるって言ってたのに・・・」
「ねぇ、ビンチュイ・・・・あっ、あれ!」
バオの顔がひきつっていた。指差す向こうには・・・・ハトの大群がいた!ポッポッポッポッ、耳が痛い!
「うっ、うわ!これは居すぎってものじゃない!」
「くっさー!フンだらけよここ」
メンバー全員数とにおいにうずくまった。でもしゃがむとハトが寄ってくるので立たなければならない。
「とにかく探そう!ビンチュイ笛吹いて!」
詹麗君が鼻をおさえて叫んだ。みんな飛んで来るハトとフンにキャアキャア逃げ回っていた。みんな音楽家庭のお嬢様育ち。こんなひどい所の中に居たことがない、だからかなり苦しんでいた・・
ビンチュイは笛を吹いた。すると寄ってきたのは1羽だけじゃない、たくさんのハトがこっちに向かってきた。
「キャ!気持ち悪ーいー・・・・あ、頭が痛くなってきた・・・」
「止めないで吹かなきゃ・・・・・・・・ビンチュイ?ビンチュイ!ちょっと!」
「ねー大変!イエンが倒れちゃった!」
ティンが叫ぶ。みんなイエンに駆け寄るが、バオとジンはビンチュイに駆け寄った。
「ビンチュイ!どうしたの?匂いに酔ったの?」
バオがうずくまるビンチュイの背中をさする。そこに周建楠が来た。
「しっかりしなさい・・・・熱があるわ!匂いじゃないわね。風邪かしら・・あなた達なにか知らない?」
あっ、と思い出した。そういえばコンサート中に薬を飲んでいた、その効き目がきれたんだ。こんな時に!
ビンチュイは楽坊の中で一番体が弱い。それはメンバーがみんな知ってる事、いつも1番心配される。
バオはビンチュイが具合が悪い事を知りながら、気遣ってあげなかった事を心底後悔してた。
「ビンチュイ・・・ごめんね・・・ごめんね!ビンチュイ・・・私のせいだ・・」
「なに言ってるのよ落ち着いて!とにかく病院に連れて行きましょう。イエンもよ!誰かおんぶして」
「あ、いた!今一瞬鈴が見えたよ!あーんチラ見だからわかんなくなっちゃった・・・・」
クンが叫ぶ。みんなハトの方を見るが鈴のついたハトは見当たらない。
「ポッポは明日にしましょう。今は二人を病院へ運ぶのが大事よ」とジェンナン。
「でも居るってわかったら連れ戻さなきゃ!明日迎えに来られたらなんて説明するのよ」とクン。
二人の言い争いになりかけたがメンバーが止めた。そして楊松梅と周建楠が話し合い指示を与えた。
「クンとジンとユエン。ここに残ってポッポを探して。ユエン、ビンチュイの代わりに笛を吹くの頼んだわよ」
「わかったわ、曲名は知ってるから。でも私の笛、ビンチュイのより少しキーが高いの。大丈夫かしら」
「バオとジェンナンはビンチュイとイエンをおぶって病院へ。リーチュンとレイとティンちゃんもついて行って」
「わかったわ。ソンメイとジンジンとシュアンはあのおじいさんの家を探してくれないかしら?紙あるよね?」
「ビンチュイのポッケに入ってたわ。ポッポを返すのを遅くして欲しいと頼みに行くんでしょ、了解したわ」
という分け方でそれぞれ行動した。連絡の取り合いはマメにするという約束で・・・
バオは自分でビンチュイをおんぶして走っていた。待っててねビンチュイ、私がついてるからね!
リーチュンとレイは前を走り、タクシーがいないか探していた。ティンは王さんに電話で事態を報告してた。
イエンはあのきつい匂いに気を失ったらしい。でもジェンナンはおんぶりながらかなり心配な顔だった・・・
数十分後、ソンメイ、シュアン、ジンジンの3人は北京市内の住宅街に着いた。
「5番・・・密集してるこっちじゃないわね。・・・向こうの静かな方よ」
ソンメイが紙を持ってキョロキョロしながら先頭を歩く。ジンジンにはもう緊張感が抜けていた。
「あのさー、なんでおじいさんの家に行くの?元々まだ来ないかもしれないじゃない」
「何言ってるの。来るつもりかもしれないじゃない。たとえポッポは見つかったとしても困るわ」
ソンメイが顔だけ後ろを向き答える。ジンジンはまたわからなくなった。
「ポッポが見つかれば返せばいいだけなんじゃないの?」
「だめよ。預かったのはビンチュイ、だから返すのもあの子じゃないとだめよ。でもそのビンチュイが倒れた」
「・・・すぐに回復すると信じたいけど・・・もしかしたら・・長引く病気・・とかかもしれないでしょ」
シュアンが途切れ途切れに言う。万が一の話なのに、昔本当にそうなった事があるから・・心配だった。
「着いた。ここの家のはずよ。コホン・・・・すいません、どなたかいらっしゃいませんか?」
はい、と中から現れたのは中年の男性だった。
「こんにちは。ここに孫中偉さんが住んでいると聞きやってきたのですが・・」
「私の父ですよ。あなた達は?・・・ひょっとしてハトを預かってくれたお嬢さんですか?」
「はい!私はその友達の楊松梅といいます。お父様にお願いがあってやってきました」
「申し訳ないですが父はここにはいません」
「どちらにいらっしゃるのですか?」
そして3人は思いも寄らない事を聞いた。
その頃、クン、ジン、ユエンの3人は悪戦苦闘していた。
「キャア!これぜったい無理!」
「おかしいわ。もう少し下げて吹いてみないと合ってないのかしら・・・」
ユエンは何度も笛を吹いたが、たくさんのハトに迫られるとつい止めて逃げてしまう。期待できなくなった二人は自分で鈴をを探してるが、普通のハトが多すぎて目が酔ってくる。
「ねぇやっぱりもうやめない?明日にしようよ。どうせ遅く返すって頼んでいるんだし・・・」
クンが疲れた顔をしてユエンに言う。ユエンも普通に吹けなくてイライラしていた。
「それもそうね。もう止めましょうか。笛取り替えてまた来たいし・・・ジンいいよね?」
とジンを見ると彼女は怒った顔で近寄ってきた。二人はちょっとビビる。
「何言ってるの!ここまで頑張っておいて諦めるの?じゃあ二人とも何のために今ポッポを探してるの?預かり物だから?バレたら怒られるから?そんな理由だけで探してたのならもう帰っていいよ!」
ジンは突き放すように言った。二人は言い返せない。
「ポッポに出会わせてくれたのはビンチュイだよ。そのビンチュイが今苦しみながらもポッポの心配しているのに、元気な私達は何もできないの?それじゃあの子が可哀そすぎるよ、見つけてあげようよ!」
ジンの訴えに二人は無表情で顔を見合わせた。そしてすぐ、ウンとうなずきあった。
「ごめんジン。自分のことしか考えてなかった自分が情けないわ。さぁ、探しましょう!」
クンの言葉にユエンもうなずいた。ジンはビンチュイのために頑張っているんだ。それなのに私ときたら・・・
「あのさ、今思いついたんだけどユエン最後まで吹いてみなよ。ハトは私達が追い払うわ、壁になるね」
そうか、全部吹き始めてすぐ止めちゃうから来ないのかも。ジンとクンはユエンの前に立った。
「ありがとう二人とも。もう堂々と、ビンチュイの思い出して吹くのではなく、この笛で、あの曲を吹くわ」
そして目をつぶり吹き始めた。ハトがたくさん寄ってきたけど、ジンとクンが手やカゴで振り払った。声を出さず、苦い顔しながらも頑張って全身でハトを払った。おかげでユエンは吹き続けていられた・・・
すると上から飛んで寄ってきたハトの中に鈴を下げたハトが!ジンは笑顔でカゴのドアを開け掲げた。
ビンチュイが目を覚ますと、天井と壁が真っ白だった。
「あ、気がついたのね!おはようビンチュイ!具合どう?」
バオが隣で興奮しながら言うとイエンが入ってきた。
「タオルもらってきたわ。あ、起きたわね!待ってねいま先生呼んでくるわ」
イエンがまた出て行く。ビンチュイは頭がボーッとしてる、バオはよかったと安心しすぎて泣いていた。
担当医が来て少し見て説明してくれた。体調不良のまま大勢の前に立っていたせいで高熱の出る風邪の菌が入ったらしい。注射はうったがまだ完治していないのでもう1日入院するべきと言われた。
「私丸一日寝てたなんて・・しかも・・・どうやってここに来たのか覚えてないんだけど・・・」
「大変だったんだよー。ビンチュイと一緒にイエンまで倒れちゃって。だから走って病院連れてきたんだよ」
「あ、私のほうは大丈夫よ、ただの失神。迷惑かけて悪かったと思ったからあなたの看病を買って出たの」
イエンも倒れたのは知らなかった。そしてだんだん思い出してきた、あの時の状況を・・・
「ねっ、ところでポッポは?見つかったの?」
あー・・ともったいぶる二人。ビンチュイが不安な表情をした。するとバオが窓を指差す。
と同時に左横からツンツンと音がしていた。ポッポが窓を突っついていたのだ。慌てて窓を開ける。
「ポッポ!無事だったのね!よかったー・・よしよし。あら、ありがとうお手紙?」
ポッポがくわえていた手紙を抜きとり開いてみた。そこにはこう書いてあった。
『笛吹きのお嬢さん、具合はどうですか?話はあなたのお仲間からみんな聞きました。ポッポのために懸命になり可愛がってくれたのですね。私は最後までこの子と過ごす事にしました。本当に、ありがとう』
最後のありがとうは3回も書いてある。おじいさん・・・ビンチュイが呟くとポッポが下に飛んで行った。
窓の下を見ると、あのおじいさんとみんながいた。
「やっほービンチューイ!おはよー!」
大丈夫ー?とかみんな大きな声で言いながら手を振っている。その真ん中にはおじいさんが居た。
「みんなぁ!ありがとう、もう大丈夫よー!」
ビンチュイが笑顔で振り返す。ここは3階だから大きな声で大きく両手を振った。
おじいさんが笑顔で帽子をとって大きく振った。手にはポッポがいる。居心地よさそうに・・・
そして後ろに止めてあった車の助手席に乗り行ってしまった。ビンチュイは身を乗りだして手を振り続けた。
「ありがとう・・・楽しかったわ!ポッポ、おじいさん、元気でねぇ!さようなら!」
車が見えなくなって窓をしめた。メンバーはこっちに来るようでもういなかった。一息つくとバオが話した。
「ソンメイ達の話によるとね、あのおじいさん病気で入院してたんだって。だからポッポを預けたみたい」
ビンチュイは驚いた。預かる理由なんて考えていなかった。するとメンバーが入って来て続きを話す。
「でも高齢だから治らないとわかってた、だから入院よりも山村に帰ってそこで最後まで過ごす事にした。いつ死ぬかわからないならポッポを誰かにあげようと思ってた。そして出会ったのがビンチュイだった」
「本当はあげたつもりだったって。でもやっぱり寂しかったみたい、残りの時間を一緒に過ごしますってさ」
そうだったのか・・そういえばポッポを渡された時、寂しそうな目をしてたっけ。お別れするつもりだったんだ
「私ポッポを欲しいと思ってたけど、やっぱり最後まで飼い主のそばにいるのが1番幸せなのよね」
ビンチュイは小さくため息をついた。でも楽しかった思い出が頭の中で回ると元気が出てきた。
「みんなありがとう、私の事なのにみんなが頑張っちゃって・・・いつかお礼するわ」
「もう何言ってるの!ビンチュイが元気になってくれるんだったらなんでもするよー大切な友達だもん!」
そう言ってバオが抱きついてきた。一晩中つきっきりだったのに疲れはみせなかった。みんなもだった。
「あは。あれ今日の練習は・・・みんな行かなくていいの?」
「王さんに全員でを頼み込みして休みをもらったの。友達と練習なら友達のほうが大切だもん!」
ジンがキッパリ言う。ビンチュイはなんだか照れくさくなった。結局その日はずっとみんなそばに居てくれた。
ありがとうポッポ。ありがとうみんな。私は最後までずっとみんなと一緒に居たいです。
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