「さっ、1枚選んでみて」
馬菁菁がわくわくしながら孫婷に言う。目の前にはカードが並べられていた。
「じゃあこれ」
「はい。おっ、いいカードだわ。これまでの努力が認められるとか、期待が実現するとかよ。何かない?」
「ある!もうすぐテストなの。ちゃんと勉強してるけど自信なくて。でも大丈夫なんだね!」
「そうね。努力すれば実るってことだから・・・頑張ってね!」
「ありがとう。すごーい、当たるね。ジンジン占い師になれるよ」
フフンと鼻で笑ってカードを集める。気どっているが本当はかなり嬉しい。
近頃ジンジンはタロットカードを持ち始めた。この前上海に行った時に張爽に買ってもらったのだ。
「プレゼント。最近元気ないようだから、これで楽しんで」
別に元気がないわけではないが、ジンジンはありがたく貰った。
ジンジンは小さい頃から親と離れて生活してたせいか、1匹狼になりやすいタイプだった。かといって大人しいとか人見知りするとかではないが、そばに誰か居ないなら居ないで別にいいという性格。
だからタロット占いを始めるのに特に意味はない。最近みんなの輪に入りにいかないから丁度よかった。
「また占ってるのね。当たるでしょう。私もびっくりしたもん」
シュアンが入ってきた。ジンジンの練習に1番つき合っていたのはシュアンだから当たる事を信じている。
「すごいわよね!ジンジンがすごいのか、このカードがすごいのかわかんないけどさ。アハハ」
「どっちもよ。だから当たるんじゃん」
ジンジンがさらっと言う。すぐ図に乗るんだからーと思いながらもジンジンに元気が戻ったのがシュアンは嬉しかった。そして練習中の休憩時間が終わった。
数日後、ジンジンは地元で評判の占い教室に行った。占い師になる人のための教室である。
ジンジンの占いは当たると楽坊で人気になり、毎日のようにメンバーを占っていた。みんな結果に喜び騒ぐので見てて楽しかった。ところが占いを信じない派の周建楠だけは反応が違った。
「・・・仕事面は当たってるけど、金銭面は違うわね。私その辺はきっちりしてるから。悪いわね」
この言葉がジンジンには気に入らなくて、なら占いを極めて驚かせてあげようじゃないのと思いここに来た。
「すいません。ここには通えないのですが、本物のタロットカードと本が欲しくて来ました」
受け付けみたいな女性がちょっと待ってくださいと言われ座って待った。数分後、女性が戻ってきた。
「本のほうはお金かかりますが。あと本当に先生から習わなくていいのですか?プロへは長くなりますよ」
「私仕事してますのでプロにはなりません。独学でいいんです。代金はいくらですか?」
そしてお金を払い、タロットカードの扱い方や保管のきまりを聞き帰る時、女性から一言言われた。
「占いは所詮占いです。運命は自然に変わることもあり、また自分で変わらせる事もできます」
その日からまた勉強が始まった。仕事や練習の休憩時間になると必ず本を読んだり誰かを占って練習したりしていた。メンバーは少しあきれながらも、自分が占ってもらう事は嫌じゃなく楽しんでいた。
でもシュアンはジンジンがこれほどハマると思わなかったので、関心しながらもだんだん心配になってきた。
「ジンジン!誰かと再会するかもって言ったじゃない。昨日学生時代の友達に会ってびっくりよ!」
「近いうち何かに失敗するって言ったでしょ。本当に家族に出す夕飯の料理大失敗しちゃったのよー」
「モテモテの日って言われて期待してたら、帰りファンに囲まれちゃって大変だったわ。確かにモテたけど」
このようにいつも当たったとか、本当にそうなったとかメンバーからの報告で人気者になる日々が続いた。
「毎日占いもできるようになったし。細かいことも予測できるようになってきた。私って才能あるかも!」
ジンジンは鼻高々だが、シュアンは少し心配な毎日で、ジェンナンは1歩引いて見ていた・・・
ある日、詹麗君に頼まれたので近未来の運勢占いをしていた時のこと。
「それじゃ、この中からまずは1枚選んでみて」
「うーん、これ!」
開いたカードを見てジンジンは固まった。塔の正位置・・トラブルや突然の事故に巻き込まれる・・・
「よくない事・・なんだろう。ちょっと、違うカードでまたやってみましょう。少し細かくなるわ」
そしてカードを変え並べ方も変えて選ばせた。それでもまた悪いカード、再度選ばせても悪いものだった
「どうなの?なんか怖そうなカードだけど・・・」
「うん・・・良くない事が・・・リーチュン事故に気をつけるのよ。1人で外を歩かないほうがいいわ」
リーチュンは不安な顔をした。でもジンジンの心の中はもっと不安だった。本当の結果は、事故により大怪我をして未来が絶望的になる可能性・・だったのだ。こんなこと本人にはとても言えなかった。
ジンジンは怖くなった。気をつけてと言ったけど、きっと忘れてる。そして私の予測は当たるのだ。これで本当に事故に巻き込まれたらどうしよう・・・大怪我をして楽坊を続けていけなくなったらどうしよう・・・
そしてこれは近々だ・・・明日?あさって?しあさって?音楽家にとって致命傷の怪我だったら・・・あぁ!
その夜、家で明日の日本行きの準備をしていたがリーチュンが気になって全然はかどらなかった。
同居しているシュアンは、ジンジンの様子がおかしい事に気づくと、ソファに座り少し微笑む。
「おいで。ジンジン」
両ひざを叩いて呼ぶ。ジンジンはそばにきてゴロンとひざにあお向けで寝転がり微笑む。
一緒に住むほど仲のいい二人の普通のスキンシップの1つである。メンバーの前でする事もあった。
「どうしたのよ?何か嫌なことでもあったの?」
「私・・・知ってはいけない事を知ったような気がするの・・・どうしたらいいのかしら・・・」
「リーチュンの事でしょ?占ってもらってから様子が変だったもん」
「災いが降りかかる・・・現代なら事故にあい怪我をする・・・私は知ってしまった。どうしよう・・」
それを聞いたシュアンはペチッとジンジンのおでこを叩く。
「なに弱気なこと言ってるの!わかってるんだったら防がなきゃ!」
「シュアン・・・そうよね、未来は変えられるのよね!そうよ、知ったのなら守らなきゃ!ねぇシュアン」
「私達で守ろう!リーチュンを。ジンジン!」
次の日、楽坊はCD発売のため日本に来た。行動するたびジンジンはすぐにくリーチュンのそばにきた。
「どうしたの?なんか不自然に見えるんだけど・・」
「いや別に・・・なんでもないわよ」
こういう所はジンジンは不器用だ。笑顔も不自然で、本人以外みんな無理してる事に気付いていた。
仕事の握手会もテレビ出演も順調に過ぎて行き、夜ホテルに着いた後少しだけ外出許可を得た。
近くに大きなおみやげ店があったので少し買い物し戻る時、リーチュンは自然に先頭になっていた。
「日本の冬も寒いねー。ジン何か買ったの?」
と後ろを振り返った時、騒音がうるさい車が猛スピードで走ってきた。
「リーチュン危ない!」
えっ、と横を見た時ライトが眩しくて目をつぶった・・・と同時に腕を思いっきりひっぱられた!
ヒュンと信号無視していわゆるヤン車が走って行った。リーチュンはジンジンに抱きついていた。
「あぶなかった!大丈夫リーチュン?」
「ふぇ・・・びっくりしたよー。なんなのあれ・・・・ジンジンありがとう!」
「うん。これで未来は変わったわ。この事だったんだわ事故って。ねぇシュアン、守れたよ!」
そうね・・・と力なさげに返事するシュアン。横でジェンナンがため息をついた。
翌日、ジンジンはいつも通り気分がよかった。
「見て見て。昨日ビンちゃんからもらったの。ガラスのリンゴ」
「キレイ!水晶みたいだね。大事にしなよ」
昨日の出来事で今日はリーチュンがジンジンにくっついて来た。安心したジンジンは思った。
『これを機にもう占いをするのはやめようかな・・・未来を知るって事は楽しくもあり怖い事だとわかったし』
それでもシュアンの密かな不安は取れなかった。本当に終わったのだろうか・・・
1日の仕事が無事終わり、ホテルに戻る時バスの中でスタッフが急に左を指差し説明を始めた。
「えーここの建物の屋上が明日のみなさんのステージです。実は仕掛けがしてありましてね、お楽しみに」
宿泊ホテルのすぐ近くにある2階立ての建物だった。みんなどんな仕掛けだろう、と騒いでいた。
夕飯が終わりフリー時間。みんな自由の間と言うけっこう広い部屋でくつろいでいた。
「お願いジンジン。今日の運勢でいいから占って」
「今日ってもうすぐ終わるじゃん。ったく仕方ないなぁ、リーチュンは。じゃあ待ってね」
カードを並べた直後トイレに行きたくなったので、2枚開いて待っててと言い残し席を立った。
戻ってくるとリーチュンがいない。辺りを見回してもいないのでそばで本を読んでるクンに聞いてみた。
「レイちゃんに誘われて明日のステージ見に行ったわよ。仕掛けが知りたいんだって。子供ねぇ」
ジンジンは立ったまま開いてあった2枚のカードを見ると、急に顔がこわばった。
「カード・・・あなた触ってないわよね?」
「なに?リーチュン以外誰もそこに来てないわよ」
「いやぁ!!」
ジンジンは叫んだ。そしてあわてて部屋を出て行った。終わってなかったんだ・・・・災いが!
「シュアン!大変なの!シュアン!」
叫びながら走ってホテルを出ようとすると、ジェンナンに腕をつかまれた。
「どこに行くのよ?そんな格好で外でたら風邪ひくわよ」
「リーチュンが・・・最悪なカードを開いて出て行っちゃったの!事故にあうかも・・・!助けなきゃ!」
焦っていたので文章にならなかったが、理解したジェンナンは急に怒った。
「いい加減にしてよ!占い占いって!カードなんかで未来がわかるわけないでしょう!目を覚まして!」
「タロットは当たるわよ!なにムキになって怒ってるの」
「じゃあ楽坊が成功したのはわかっていた事なの?最初から決まっていたって事なの?努力してつかんだのに、占い聞いとけば成功すると出たのだから手抜きしてもよかったとか?ふざけないでよ!」
ジェンナンは怖い顔で言った。彼女が占い嫌いな理由がわかったジンジンは何て答えていいか考えた。
「当たったとか言うけど単なる偶然よ。悪い事が起こると出たから家を出ないなんてバカバカしい!」
「でも・・・前もって予測したから防ぐ事ができたって事もあるじゃない。事故が起こるのわかってて見過ごすなんて私にはできない!何もなかったらそれでいい、でももし当たったらどうするのよ!」
二人はじっとお互いを見つめる。そしてジンジンがジェンナンの手を振りほどいた。
「私が守る!」 そう言ってジンジンは走って行った。
リーチュンの選んだカードは『事故やトラブルにあう』と『不安や心配事が現実になる』だったのだ。
外は寒かったが気にしていられない。待ってねリーチュン、私が着くまで何もないようにね。お願いだから!
その頃リーチュンはレイと一緒に明日使う建物の屋上にいた。
「見てー照明がもう置いてあるよ。つけてみよ・・わぁ、ガラスのリンゴちゃんが光ってキレイ!」
「ほんとだね。ねー仕掛けってこの回る土台のことじゃない?手で動かせないかな?」
動かせないと思ったリーチュンは端っこにあった回る土台に乗って遊んでた。その途端・・・・・動いた!
えっ・・・・・という感じにリーチュンの体がゆっくり後ろへ倒れていく。ここは柵のない屋上、というと・・・
叫ぶ声なんて出なく、リーチュンは体が落ちそうになっていく。そして何かをつかむように手を前に出した!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ガッシャーン!!・・・・・・・・・・・・・・・・・
リーチュンの手をシュアンがつかんでいた。そのシュアンの腕をジンジンがつかんでいた。
間に合ったのだ!リーチュンの体は宙ぶらりんになっていて、ガラスのリンゴだけが下に落ちていき割れた。
「リーチュン・・・無事ね。今ひっぱるからね!」
そして3人でリーチュンの腕を引きなんとか無事についた。リーチュンは突然の恐怖に大泣きした。
「よかったリーチュン・・ごめんね私が手で動かしたら全部つながってたみたいで・・・ごめんね!」
レイも一緒になって泣いた。この光景をみてるシュアンをジンジンが見て言う。
「シュアン・・ありがとう、私じゃ間に合わなかった。ここに来てたの気付かなかったわ」
「入り口が二つあるみたいねここ。ジンジンがホテルで叫んでたのを聞いて走ってきたのよ。ジェンナンと何か話してたでしょ、その横を通り過ぎてったのに気付かなかった?」
知らなかった。あの時は周りが見えていなかったから・・・そういやジェンナンに悪いこと言ったような・・・
「ぐすん。二人ともありがとう!命の恩人だね、一生感謝します。でもどうしてわかったの?」
「ジンジンの占いのおかげだよ。予測できてよかった。ありがとう楽坊の占い師さん!」
ジンジンは照れ笑いをした。役に立てた事と、友達が無事だった事が本当に嬉しかった。
ホテルへ帰って行く。リーチュンはおしゃべりが出来るほど元気を取り戻していた。
「あのガラスのリンゴ・・・ビンちゃんからもらったの。割れちゃったね、謝らなきゃ。怒るかな?」
大丈夫よあの子は優しいから。あのガラスは粉々に割れていた。あの上にリーチュンは落ちたのかもしれなかった。死にはしないが間違いなく大怪我だろう、占いの予想通りだった。
ホテルにつくとみんなが腕を組んで待っていた。
「もう!ジンジンは突然叫ぶし、シュアンは走って出ていっちゃうし、ジェンナンは怒ってるし何なの?」
「私たち仲間でしょ、ちゃんと教えてよ」
4人は顔を見合わせた。どこからどう説明していいのかわからなく苦笑した。
次の日、収録のため楽坊はあの屋上にいた。よく晴れていて暖かだった。
「後ほど、ここで十二楽坊のみなさんが生演奏してくれるということで・・・」
女子アナが中継している後ろのみんなの笑顔は爽やかだった。リーチュンも自然な笑顔だった。
「この場所怖くないよ。1日たてば大丈夫」
次の出番待ちの時間リーチュンが言った。小さい頃から度胸があるのでトラウマにならず皆安心した。
それぞれがおしゃべりしている時、ジンジンが端に立って何かしているのにシュアンは気がついた。
「ジンジン、何してるの?危ないよ」
「このカード、もういらない」
と言ってタロットカードを下に落とした。あー、とシュアンが下を見下ろす。
「だってこれがあったら先がわかってしまって怖いもん。未来はわからないほうが楽しいんだわ」
ふぅ、とスッキリした顔をして揚琴の所に行く。シュアンは名残惜しそうな顔で下を再度見下ろした。
5分後、おしゃべりしてるジンジンとシュアンの所にジェンナンが来た。そしてタロットカードを差し出す。
「これ。昨日のリーチュンの話を聞いて少し考えが変わったかわ。まんざらバカにできないものなのね。持ってなさいよずっと。占いに没頭するのではなく、疲れを癒す趣味としてなら続けてもいいわよ」
「拾ってきたんだ。そうだよジンジン!やめる事ないよ!私達ほんとに占いは楽しいと思ってるんだから」
「ジェンナン・・・シュアン・・・。そお?怖いと思われないなら、やっぱり楽坊の占い師続けようかな!」
ニカッ、と白い歯をみせるジンジン。シュアンはニンマリと笑う。ジェンナンは安心して向こうに行った。
「ねぇシュアン。占わなくても未来がわかってることが1つあるの。なんだと思う?」
うーんと考えていると、ジンジンがシュアンのほっぺにキスをした。
「私とシュアンがずっと一緒にいるって事よ。信じてるから!」
だって私とタロットカードを出会わせてくれたのはシュアンだもん。幸運を運んでくれる人だと思っているよ。
未来がわかるって楽しい事?怖い事?知りたい人は私が占ってあげる!
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