「ねぇ、ちょっと相談したいことがあるんだけど」
楽屋でバオが鏡に向かって座っている3人に後ろから話しかけた。
「ん?なぁに?」
答えたのは、髪を横にたらし両手で丁寧にクシでとかしながらバオを見るジェンナンと、
化粧していた手を止めてクルッと体ごとバオの正面を向いてにっこり微笑むソンメイと、
椅子にもたれ足を組みファッション雑誌を読んでいる姿勢を変えずに顔だけバオを向くジンジンだ。
それぞれ違う反応の仕方におかしさを感じながら、バオは立ったまま話した。
「最近ね、私の周りで変な事が起こるの。これって疲れてるのかなと思って」
「変な事ってどんな事?」
「なんかお化粧ポーチが無いと思ったら全然違う所にあったり、琵琶のツメがお財布の中に入ってあったり、デジカメに撮った覚えのない画像があったり・・・おかしいよね?」
「それただのド忘れなんじゃないの?ハハハ」
ジンジンが少し笑って言う。バオは困った顔をした。
「そうなのかな・・・だとしたら疲れからきてるんだよね?誰か癒す方法あったら教えて欲しいんだけど」
「私はね、最近アロマテラピーをやってるの。ラベンダーとかローズマリーの香りは癒されるわよ」
ジェンナンが人差し指を立てて「オススメよ」と言う。ジンジンは興味が無いらしくまた雑誌を読み始めた。
「私は自然を撮った写真集を買ったの。いいわよ、なんだか旅行した気分になるの!」
「あの・・盛り上がってる所を悪いんだけどさ、私の携帯電話知らない?」
ジンが顔をポリポリしながら聞いてきた。さぁ・・・と答える3人に困った顔をした。
「そっかぁ。なんか変なんだよね最近、さっきまであったやつが無くなったりとかしてさ・・・」
3人は顔を見合わせた。ひょっとしてこれはバオだけの問題ではないのでは?
「ジンも!?私もなの、物が移動するの!これって誰かのイタズラ?それとも・・・怪奇現象とか?」
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってよ!あ、私さっきどっかに持ってったんだ。忘れてたぁ、ハハ」
どうやらジンは幽霊が苦手らしい。それに周りのメンバーもうす笑いしる。なんか言わなきゃよかったわ。
「ジン、これあなたの携帯じゃない?私のバックの中に入ってたわよ」
2日後、収録後に楽屋に戻るとバオの替えのTシャツが無くなっていた。これはもう完全にイタズラだ。
「もう誰なの!今なら許すけど・・・・いないのね、こうなったら自分でイタズラ犯を捕まえるわ!」
本気で怒るバオにみんな戸惑っていた。そんな中ビンチュイが笑って隣にくる。
「私も協力するわ。一緒に幽霊の正体を暴きましょ!」
「ありがとうビンチュイ。探偵やろうよ!私がホームズであなたがワトソンね。いいでしょ?」
いいよ、と笑顔でバオと手を合わせるビンチュイ。彼女のおかげでバオの怒りはすぐに治まった。
「昨日ね、私の口紅が1つ無くなったの。でも返ってきたんだけど、多分同一人物よ。探してみよう」
ということでメンバーに聞き込み調査。練習中にあった小休憩の時控え室に行ったのはシュアンのはず。
「えぇ、琵琶の弦の替えを取りに行ったわ。その時は私の他にリーチュンとクンがいて、あと誰か・・・」
「私はリーチュンにブラシを借りるため一緒に戻ったの。他にね・・・ジンだったかな・・いたような・・・」
クンの証言はあいまいだったが、信じて二人でジンに聞いてみた。するとジンは急に両手を合わせ
「ごめん!それ私です!なんか可愛い色だからつけてみたくて。つけてすぐ戻せばバレないと思ったの」
エー!とあっさり見つけた事にがっかりするバオ。もうちょっと何かあったら面白かったのに・・・
「ごめんね。つけた直後に携帯鳴ったからとっさにポッケに入れちゃって・・・怒られるかと思ったんでこっそり返したのさ。あ、でもね、その他の犯行は私じゃないわよ。ほんとにこれだけなんだからね!」
バオはまた明るい表情になった。ちょっとよかった、いや見つけなきゃいけないんだけどまだ早いと思って。
「ね、お詫びにさ、私も探偵ゴッコに入れてよ。これでも推理力あるんだ。でね、もし私が捕まえたら・・」
「ご褒美にあの口紅を私に頂戴って言うんでしょう?」
さすがビンチュイ、頭いいから読めてるのね。ジンは焦りながらまた両手を合わせて拝むポーズ。バオはしょうがないという気持ちで許可した。そうこなくっちゃ!とジンは親指を立てて笑う。
「そういやこないだね、ティンちゃんが窓から写真撮ってたわよ。イエンと一緒に。たしかデジカメで・・・」
はっ!とするバオ。そうだ、たしか私と似たカメラなんだ。知らない画像があった、イタズラはティンちゃん?
「待って。3人で行ったら犯人って決め付けてるみたいじゃない?1人1人で行ったほうがいいわ」
「その前にさ、Tシャツってどこに置いてたの?収録前なら私この楽屋にいたよ」
「そうなの?収録前私はソンメイとトイレで話し込んでたの。で途中からティンちゃんも入ってきて・・あれ」
バオがこめかみを押さえて思い出す。そうよあの時ティンちゃんも居たんだ、だから犯人なはずがない。
「私もここに居たんだけど・・窓開けて携帯で長電話してたの。役にたたなくてごめんね」
「いいんだよ。じゃあ私とジンで楽屋にいたメンバーに聞いてみるわ。ビンチュイはティンちゃんに聞いて」
「わかったわ。でも今は急いでバスに乗ろう!みんな行っちゃったわよ」
3人は大慌てで楽屋を出る。練習所へ移動するバス待ちの時間に話していたのだ。
練習所に着き、バオが琵琶を持って入るとすぐ梁剣峰先生に呼ばれた。
「バオ、ここで遊ぶのはよしなさい」
は?と思っていると背中を指差された。触ってみると、背中に1本の花がくっついていた。
「やぁだなにこれ!知らなかった・・・すいません。もう、誰がやったの?」
みんなクスクス笑って答えない。バオは恥ずかしさと悔しさでいっぱいになった。ぜったい見つけてやるわ!
練習が終わり帰る支度の時、ビンチュイはこっそりティンに話しかけた。
「ねぇティンちゃん。こないだデジカメで何を撮ってたの?イエンと」
「えっ!あ、あれね、景色だよ。夕焼けがキレイだったから・・・あのひょっとして・・それ・・・」
「ビンチュイ!幽霊探しは順調かしらぁ?」
いきなりイエンが割り込んできた。ビンチュイは驚いたがティンはなぜか不安な顔になった。
「デジカメで撮ってたのは私よ。ティンちゃんの借りて私が撮ってたの、夕日に飛ぶ紙ヒコーキは最高よ」
ついでなのでビンチュイは、収録前楽屋にいたかを聞いた。2人は居たが何も知らないと答えた。
バオはまだ怒っていた。さっきの恥でムカムカしてる。ジンは近寄らないで1人で聞きこみ調査をする。
「ユエン。収録前楽屋にいたよね?他に誰いたっけ?」
「ウーンあの時間けっこう出入り激しかったから・・クンとジェンナンが大きな声でおしゃべりしてたわ。あ、レイとリーチュンと通訳さんが固まって何か話していたのを見たわ。あとジンジンは1人だった。それくらい」
記憶力の良さにジンはちょっと尊敬した。私は周りを気にせず普通に本読んでいたから情けないな。
ジンジンにも聞いてみたが、彼女は「知らなぁい」の一言で終わった。ほんとクールなんだから。
「ジンとビンチュイ!一緒に帰ろう!」
バオは怒り口調だった。まだ機嫌を損ねてる・・・簡単に気持ちの切り替えが出来ないタイプらしい。
「ご飯食べながら調査報告ね!それでかなり絞れるわ」
ビンチュイとジンがバオを見て目を細める。
「バオ・・・・あなた本当にとりつかれてるわ」
「は?なに?なに?・・・・アー!誰こんなの付けたの!」
バオの頭のてっぺんに野花が1本乗っていた。これで2度目、全く鈍感な少女である。
次の日、とうとうバオは作戦を立てて強引に捕まえる事にした。
「調査なんてしてられないわ。こうなったらおびき寄せ作戦よ!」
「・・・だったら最初からそうしなよ・・・せっかくうちらが聞き込み調査したのに意味ないしょ」
ジンは不満そうに言ったがバオは実行すると押し切る。ビンチュイは何も言わずにバオに従った。
「いい?ここに前と同じように私のTシャツ置くの。きっとまた盗ってくはずだから来た所を捕まえるの!」
「じゃあ同じようにデジカメも置いてみたら?お財布と。私今度はそっちの方を盗ると思うのよね」
「ビンチュイ頭いい!なるほどね。なら見張りは2つに別れたほがいいね。2つ別々の場所に置こうよ」
「それ面白いね。バオ、Tシャツとデジカメは持ってきてるの?」
バオが自分の椅子にかけてあった白いTシャツを片手で取った。もう一方の手でバックからデジカメを出す
「用意がいいねぇ。じゃあ私がTシャツ見張るからビンチュイがデジカメね。バオは楽屋から出てて」
「そうね。バオが居ては犯人も来ないわ。しばらくどこかでウロウロしてて。捕まえたら電話するわ」
「わかったよ!二人とも気付かれないように自然にして見張っててね。なんかドキドキするね!」
「うん、もうすぐみんな来る時間だね。ジェンナンとソンメイはもう来てるけど。予想は誰だと思う?」
「ジンの調査からみて私はジンジンが怪しいと思うわ。バオは?」
「私も同じ!最近1人行動が多いし、相談した時もド忘れだって笑ってたもん。ジンは?」
「私もかな。でも質問して困った顔になったティンちゃんも怪しくない?」
「アーなるほどね。あの日Tシャツ盗ってから私とトイレで合流したと考えてもおかしくないよね・・・」
「とにかく。その人達を特に注意して見張ってみましょう。もし現れなかったらまた明日もやりましょう」
さぁ作戦準備。集合時間より少し早めに練習所に来てよかった。まだここには5人しかいない。ラッキーな事にさっき梁剣峰先生が急用ができ1時間近く遅れてくると連絡があった。なのでずっと待機時間だ。
数分後、みんなが入ってきた。始めはバオもこの部屋にいる。でなきゃ不自然だ。
「おはよう。聞いた?なんか練習始まるの遅くなるみたいだよ」
作戦実行は10分後だ。今はいたって普通の会話・・・
その後、バオが置き忘れと見せかけるように中央の散らかってる大きいテーブルにTシャツを、奥の窓の棚にデジカメとお財布とバックを置いて部屋から出た。ジンとビンチュイは自然にその近くに居座った。
「ジンー!昨日のドラマ見た?面白いよねあれ」
クンが普通に話しかけて来た。彼女ではないな・・この場合会話しながら目は向こうだからすごく大変だ。
ビンチュイは携帯で友達と話していた。チラチラと見張りながらだから集中できず浅い話しかしていない。
しばらくしてある2人がバックの所に来た。
「やっぱりやめようよ・・・・」
「心配しないで。悪いのは私よ」
そしてデジカメを持っていじり始めた。ビンチュイはパシッと相手の手首をつかむ。
「やっぱりあなた達だったのね」
その直後、ジンの方にも変化があった。Tシャツを持って広げようとしてる人を捕まえたのだ。
「ちょっと何してるの!まさかあなたとは驚きだよ」
すぐにバオに電話。ビンチュイは連行しながらジンの所に来ると、お互い「えっ?」と顔を見合わせた。
バオは走って戻りドアを開けるとかなりびっくりした。
「・・・どういう事?」
ビンチュイが捕まえたのはティンとイエン。ジンの方はなんと通訳さんだった。
「えっ、1人じゃなかったの?ど、どういう事よ?」
「バオちゃんごめんなさい!私が悪いの!」
「違うわ、私よ。ティンちゃんは何もしてないの。私がやったのよ。ごめん」
「イエンちゃん、もういいの!」
ティンとイエンのかばい合いは続いた。すると通訳さんが「あの・・私」と言うとすぐレイが入ってきた。
「あっ、見つかっちゃった!ごめんバオ・・・通訳さんもういいですありがとう。後は私が説明します」
通訳さんが出ると代わりにリーチュンが入ってきた。この状況をみるとすぐ理解した。
「あちゃー、バレちゃったのね。ごめんバオ。イタズラ犯は私とレイちゃんなの」
「私は違うったら!あのね、実はあの収録前、私うっかりバオのTシャツにコーヒーこぼしちゃったの。それを偶然通訳さんが見てて、シミ抜き洗剤家にあるから洗ってあげますよって言ってくれたから頼んだの」
「そうだったの?私はてっきりレイちゃんがイタズラ犯だと思って、あの時手伝ってあげるって言ったのよ」
「そう!リーチュンったらその場を見て急にニコニコするんだもん、勘違いして。私バオに謝ろうとしたのにリーチュンが、ダメ!私もイタズラに協力するねって言い出して。でもね、私それしかしてないわよ本当よ」
そしてこれ、と渡されたのは無くなったTシャツだった。きれいにたたんでアイロンかけてある。ジンは笑った。
「じゃあさっきの通訳さん、ちゃんと服が戻ったのか確認してたのね。イタズラは全部リーチュンだったと」
「違うわ!頭に花を置いたのは私だけど、まだそれしかやってないもん」
「まだって、今後もするつもりだったのね・・・。となると、その他のイタズラは・・・ティンちゃん?イエン?」
バオが2人を見るとイエンが手を上げた。それをティンちゃんが否定し手を上げる。なんなの一体?
「もうどっちでもいいから。何があったか正直に教えて」
ある日、ティンは窓を開け夕焼けを眺めていた。とてもキレイだったので写真に撮ることにした。
「イエンちゃん、私のデジカメ取って」
「はいこれね。夕日キレイね!ねぇ普通に撮ったあとに少し工夫して撮ってみたら?絵はがきみたいに」
「うん。・・・・あれ誰だろこれ・・・いいや消しちゃえ。じゃあまずはこのまま撮るね」
そうして3枚目を撮る時、日付が入ってることに気付いた。ティンはいつも表示ナシに設定しているのに。
「あれ、おかしいな何で。・・・・・・・・これ、私のじゃない!」
自分のかばんを振り返るとちゃんとデジカメが入ってた。これはテーブルに置いてあったバオの物だった。
「ごめん私間違えて渡しちゃったわね・・・。バオと同じデジカメなの忘れてたわ、ごめん!」
「アー!どうしよう!私画像消しちゃった・・・考えたらあの画像の人ってバオの好きな俳優さんだ。こないだ偶然写真撮らせてもらったって喜んでたっけ・・・怒るよね泣かれるかな・・・困ったわ!」
ティンは涙目で焦った。どうしよう・・・そればかり繰り返す彼女を見てイエンは頭をなでてあげた。
「ティンちゃんは悪くないわ、悪いのは私よ。いい?悪いのは私よ。だから泣かないで。なんとかするわ」
そして1枚だけ消して後はそのままにした。それからティンのデジカメで普通に撮影を再開したのである。
その後イエンはバオにイタズラをし始めた。化粧ポーチや琵琶のツメを隠したり。これはイタズラに気を取らせ、デジカメの画像を思い出させないための作戦だったのである。
「バオは見事にカメラを忘れてくれたわ。でもさっきクンとジンがドラマの話をしてたでしょ?そのドラマに写真の俳優さん出てるからマズイと思ったの。それでその他の画像も消して壊れたせいにしようとしたのよ」
「そしたらビンチュイに捕まっちゃって・・・バオ、ごめんね!ほんと間違えただけなの。ごめんなさい」
「・・えっ・・・あの方の写真消しちゃったの!?気付かなかった・・・そう、残念だけど仕方ないね!」
「ティンちゃんを怒らないでね。幽霊の正体は私よ。ごめんバオ、悩ませたわね。ごめんね」
「もういいよ。ティンちゃんもイエンも許すから。けっこう楽しかったし、これで全部解決だね!」
「ありがとう・・・・。あ、1つ。あの背中に花つけたのは私じゃないわよ。誰?」
「それ私だよ」と輪に入ってきたのはジンジンだった。ふくみ笑いをしている。
「いやぁ、面白かったわ!私デジカメ事件の発端から今に至るまでずっと見てきたけどドラマみたいだわ」
「は?ずっとってことは・・・犯人が誰だかわかってたの?」
「もちろん!密かになにもかも見ていたからね。全部。一部始終。ホッホッホッ」
タカビーな女の笑い方を真似して笑う彼女を、まさに美人小悪魔だと全員が心の中で命名した。
「バオに相談された時もう知ってたのよね。背中の花は私なりの癒す方法でした。良かったでしょ?」
これでは癒されるというより逆にストレスが溜まるのでは?と言いたかったがビンチュイは黙ってあげた。
「とっ、とにかく!これで事件はすべて解決ね!あ、そうだ」
バオは可愛い色の口紅でおとりに使った白いTシャツに『一件落着』と書いた。
「自分のだからいいの。これ日本人が解決した後によく言うんだって、すべて収まったって意味なのよ」
へぇ、とみんな字を見てた。そしてそれぞれ顔を見合わせて微笑んだ。爽やかだった・・・・・
「アー!ちょっと何してるのよ!それ私の服よ!」
ジェンナンが叫びだすと全員ビクついた。バオがTシャツの表を見ると、自分のじゃないことに気がついた!
「あ!あの片手で取った時、隣の席だし同じ白色だから間違えちゃったんだ!・・逃げるよビンチュイ!」
「キャ!えっ・・なんで私までぇ?」
「こらぁ!待ちなさい!」
「3人とも走らないのぉ!」
「そうだその口紅私に頂戴!」
みんな笑い転げ始めた。ドタバタなのは元気な証拠だ。部屋が賑やかになる。
こんな楽しい毎日だから、十二楽坊けっこう疲れ知らずです!
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