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蒋瑾2:13人の「時にはこんな日々」by りょう

公園のベンチに座り、ジャン・ジンが本を読んでいる。

しかしそれは見かけだけで、実際は目の前でサッカーボールで遊ぶ子供が気になって読めていない。

「ママ、一緒に遊ぼう」

「ママじゃない、ジン姉ちゃんでしょ。しょうがないなぁ、遊ぼっか!」

本をパタンと閉じて元気よく立ち上がる。男の子は嬉しそうにボールを蹴った。

この2人はもちろん親子じゃない。ジンはまだ独身だ、彼氏もいない。ではなぜこうなったかと言うと・・・

 それは3日前、楽坊はコンサートだった。満員の会場はムシムシしてて少し熱かった。ステージ側も同じだ。ジンは熱さで演奏途中に具合が悪くなった。弾き終るとそでにさがりステージは12人になった。

「ハァー・・テスト期間中の寝不足が悪かったんだわ。ちょっと体を冷やしに外に出よう」

スタッフに断ってジンは会場裏の出入り口から外に出た。何に使うかわからないが大きいレンガが置いてあったのでそこに座った。外の風は冷たいがジンのほてった体には気持ちいい。大きく深呼吸をした。

「おねえちゃん、遊ぼうよ」

ジンは目をつぶっていたので驚いた。横に立っていたのはサッカーボールを持った小さい男の子だった。

「びっくりしたぁ!なっ・・なんでここに子供が?・・・君の名前は?1人なの?」

「僕孫中一。ママがここで待ってなさいって言うから待ってるの」

「ジョンイ君か。私は蒋瑾っていうの。ママを待ってるんだ。えらいねーヨシヨシ。サッカー好きなの?」

頭をなでてあげるとジョンイはニコッと笑ってボールをジンに差し出した。遊ぼうと誘ってるのだ。

「ごめんねーお姉ちゃんお仕事なんだ。もう行かなきゃ。じゃあね。寒いのに・・・ママ早く来るといいね」

また頭をなでてジンは立った。中に入れてあげたいが親が捜しては困ると思い、申し訳なさそうに手を振って入った。ジンの体はしっかり冷えたので体調は回復してた。そして笑顔でステージに復帰する・・・

コンサートが無事終わって着替えの時、クンがジンに話しかけた。

「途中抜けたでしょ。具合は大丈夫なの?」

「うん、ありがとう。もう大丈夫だよ、外の空気吸ったらすっきりしたの。そーいやあの子、可愛かったな」

ジンはその時会った小さな男の子の話をした。みんな見たかった!と騒ぎ始めた。楽坊は子供好きだ。

「私ね将来子供は女の子が欲しいの!でねっ、琵琶を教えて、プロになって、世界を回ってほしいわぁ」

クンが両手を合わせて語っている。その姿はいかにも夢見るお嬢様という感じで気品があった。女の子は将来の話をすると目を輝かせるものなのだ。続けてレイも笑顔で話す。

「私は男の子でもいいわ。元気な子で大きくなって、将来俳優さんとかになってくれたら素敵じゃない?」

「いいねそれ!私はどっちでもいいなー男の子だったらスポーツ選手で、女の子だったら歌手かなっ」

とバオが話してる時帰る準備ができ、バスに乗ろうと裏出口に向かうと一番先に外に出たイエンが、

「ジン、さっきの子ってこの子じゃない?」

えっ?と思い外に出ると、さっきジンが座ったレンガにジョンイが座っていた。寒さで手にしもやけが出てた。

「ジョンイ君、まだいたの!ママは?まだ来ないの?あれから2時間近くたつのに・・・聞いてみるわ!」

ジンは大勢のスタッフに会場内を探させたがもうお客は帰り、会場周辺にも関係者以外誰もいなかった。

「・・・ということは、この子ひょっとして親に捨てられたの?」

「シッ!本人に聞こえるでしょ。声は小さく」

ティンとジェンナンのやりとりをジンは聞いていた。可哀そう・・・まだ小さいのに。警察に頼むしかないね。

 ところが警察に行って保護をお願いした時、ジョンイが嫌だと大泣きしてジンの足に抱きついてきた。

「ヨシヨシ・・・寂しいよね、1人ぼっちなんて・・・。ねぇ、ママが帰ってくるまでお姉ちゃんと居るかい?」

泣きながらウンとうなずき離れないジョンイ。ジンも可哀そうで涙が出てきた。けっこう涙もろいのだ。

こうして母親が見つかるまで預かることにした。メンバーも可愛がり反対する人はいなかった。その時は。

「こらっ!廊下は走らないの!」

ワーイと構わず走るジョンイの腕をつかむジン。まだ5歳の男の子、とにかくヤンチャだ。

「つかまえた。頼むから騒がないでよ・・・困ったなぁ、リーチュン!」

「いいよ。ジョンイ君!一緒にお菓子食べようよ。おいでー」

嬉しそうにリーチュンの隣の椅子に座りお菓子を食べるジョンイ。やっとおとなしくなったのでジンも座った。

「はいお茶。ママは今日も大変ねぇ」

「ありがとビンチュイ。ほんと疲れるよ・・・・ってママじゃないよ!あくまで私は姉ちゃんなの」

「別にこだわらなくてもいいのに。メンバーの中で一番ママって感じしないジンがママになるからみんなびっくりしてるわ。でも結婚前に体験できて良かったわね!ところで、母親探ししてるの?」

「いやあんまり。なんかユエンがすごい協力してくれてね。自ら警察に聞いたりしてるんだ。ありがたい」

「ユエンは人を助けるためなら練習時間潰してでも頑張る人だから。ほんと優しいわよね」

ユエンは笑顔でジョンイの話を聞いていた。そして時折、ジョンイの顔をじっと見つめるのであった。

テレビの収録中はジョンイはマネージャーさんに見てもらっていた。ジンがいないと寂しがって大人しい。楽屋に戻ると真っ先にジンに抱きついてくる。それが楽しみだった。ジンだけの特別な癒され方である。

 夕方になって仕事が終わるとジンはジョンイの手をひいて市場通りに来た。夕飯の買いだしともう1つ。

「いらっしゃい。あ、こんにちは。今日はりんごが安いよ!」

「こんにちは・・・・あ、はい、じゃありんご3つ下さい。えっと・・あ、この子別に私の子じゃないですから!」

「どうぞ。そうだよね君若いもの。親戚の子かい?坊や、オレンジ好きか?おまけして入れてあげよう」

気前がいい彼はジンの片思いの人。前にしつこい男に追いかけられた時助けてくれたのだ。それから仲良くなり、彼の売っている市場の果物

をちょくちょく買いに来てるのだ。帰り道、ジョンイに聞かれた。

「ジン姉ちゃん、あの人だれー?」

「うーん・・・・姉ちゃんの好きな人だよ。っていってもまだわかんないかー。知らなくていいよ」

「まったく!失礼しちゃうわね」

クンがバサッと新聞紙を広げたままおいた。ミュージシャンコラムと名のスペースに楽坊の記事が載っていたのである。内容は楽坊を批判するような中傷的な記事だった。中国ではよくある有名人批判だ。

「何が音楽は中途半端よ。何にもわかってないわ!いいのは顔だけですって、腹立たしい!」

「まぁまぁ、この世界ライバル多いからみんな妬んでそう書くのよ。気にしないほうがいいわ」

ジェンナンがなだめてもクンの不機嫌は止まらなかった。本当は全員が不愉快な気分だったが隠してた。

「ただいまー。良かった間に合った、ジョンイとサッカーしてて遅くなっちゃった。・・・・ん?」

スケジュールが狂い2時間の空き時間が出来たので、ジンはジョンイと外に出ていたのだ。ジンは楽屋の重い空気に不気味さを感じてあまりしゃべらないようにしたが、ジョンイは変わらずはしゃいだ。

「・・・・・なんかうるさいんだけど。これだから子供は嫌なのよ」

クンが腕組みしながらボソッと言う。ボールを蹴ってお茶をこぼしたジョンイを見て余計イライラしてきた。

 次の日も不快感は続いた。ジョンイがイタズラしてキャップの開いたマニキュアのビンを逆さまにしてこぼしたのである。メイク室全体がシンナー臭くなりみんな嫌な顔をした。ジンジンとクンが舌打ちをしてた。

雑誌の撮影中、男のスタッフ3人が後ろでおしゃべりしていた。それは楽坊のみんなに聞こえてた。

「十二楽坊の部屋入ったらすごいシンナー臭かったぜ。けっこう化粧でごまかしてるのかもな。ハハハ」

なんて失礼なの!昨日といい今日といい、私達をバカにしてそんなに楽しいの?頑張ってるのに!

他の仕事も終わって帰る支度してる時、ジョンイがクンの所に来て右手をだした。

「おねえちゃんごめんなさい。・・・・・これ壊れた」

手の中をみるとクンの買ったばかりの細い口紅が折れていた。クンはハァと息を吸うとバッと取り上げて、

「もう私の物に触らないの!!」

と怖い顔して怒鳴った。ジョンイが泣きそうな表情になる。すぐジンが来てかばった。

「この子はちゃんと謝ったじゃない!それに手の届く所に置きっぱなしにする方が悪いのよ」

「なによ!子供だからって甘やかして!大体ね、いつまでもここに居させるのが悪いのよ!早く返しな」

「見つからないんだから仕方ないでしょ!この子だってかわいそうなんだから。なによ急にキレたりして」

「だったらジン1人で面倒みて。もう私達は疲れたわ。仕事だけで大変なのに、やってられないわ!」

クンの怒りは治まらなかった。ほとんど仕事でのストレスをぶつけてるようだった。

「これ買ったばかりなのに!もうほんとイライラするわ。母親が見つからないなら施設に入れなさいよ」

「今は私が親代わりだよ!そんな事はさせないわ、みんなが嫌なら私だけでもいい。面倒みる!」

ジンもキレてジョンイに帰ろうと言った時、いない事に気がついた。不思議がるとシュアンが答えた。

「ソンメイが気遣ってあの子を外へ連れ出したわ。だめよ、親が子供の前でケンカしたら」

うなずくとジンは荷物を持って部屋を出た。クンはもうしゃべりたくないという表情で窓の外を見ていた。みんなも何も言わなかった。クンの気持ちはわかるが、ジンの怒る気持ちもわかる。親心か・・・

「ありがとソンメイ。ジョンイ、帰ろう。今日はおいしい卵スープを作ってあげる」

「・・・・・クンねえちゃん・・・怒ってた・・・」

「・・・大丈夫。ジョンイはいい子だよ。ちゃんと謝ってえらかったね。ヨシヨシ・・」

頭をなでてあげるとジョンイは歯を見せて笑った。たとえ誰もいなくなっても、私がお前を守るからね。

 1時間後、ユエンは自分の出身学校の近くを歩いていた。たしかこの辺って聞いたんだけど・・・

キョロキョロして角を曲がると1人の女性が歩いていた。顔に大きなホクロがある。見つけたわ!

「あなたレイシャンでしょ?」

女性は振り返り、ユエンと目が合うと驚いて走り去った。ユエンは追いかける。

「待ちなさいよ!私から逃げるってことは、やっぱりあなたなのね!」

 ジンは食材を買った後も家に帰らず外にいた。ジョンイが寄り道したがるので好きなように行動させた。公園でノラ猫が寝転がっていたのでジョンイがなでていると、あの市場の彼が来た。ラッキー!

「おう、偶然だね。遊んでたの?君も大変だね。俺は帰るとこさ。今日店はアニキに頼んだんだ」

気さくに話してくれるのでジンは嬉しかった。突然だから何を話していいかわかんないよ、照れちゃうな。

「ねぇ僕お腹すいたぁ。あ、ジン姉ちゃんの好きな人だ!」

なっ!!!なにを言い出すのよいきなり!おいっ!

「あっあぁぁ!あのね、ごめんね今のはウソ!ってわけじゃないんだけど・・・あっ、あわわ・・どうしよ・・」

「ハハハ・・・ありがとう、嬉しいよ。」

カーッ、と顔が真っ赤になった。マジで?これってオッケーてこと?えっ、どうしよう、なんて言おう・・・

「ジン姉ちゃんオシッコー」 あぁやっぱりお前は天使だよ。

若い親子が3人で、子供を真ん中にして手をつないでる風景。そんな感じで歩いていた。

両手をつながれたジョンイは嬉しくて何度もジャンプする。その度にジンと彼は声を上げて持ち上げる。ジンは幸せだった。将来こんな風に3人で歩けたらなぁ、早く結婚したいなぁ・・・だめかな・・・

 その頃ユエンはレイシャンと言う名の女性と話していた。実はこの二人は学生仲間で同い年である。

「5年以上も連絡とってなかったけど、ジョンイ君の顔があなたにそっくりだったからすぐ思い出したわ」

レイシャンはふてくされた顔をしていた。彼女がジョンイの母親である。しかし彼女は何も話そうとしない。

仕方なしにユエンは練習所の住所が書いた紙を渡し帰った。自分だけじゃ彼女の心を開かせることは出来ない。みんなの意見が必要、そしてジョンイ君に会わせる事も必要、そう思ったのである。

 次の日、ユエンはジョンイがお昼寝してる時に、みんなに母親を見つけた事を報告した。ジンは悲しそうな顔をしたが、ジョンイの寝顔をみてうなずきながら口元だけで笑った。お昼休憩にレイシャンが来た。

ユエンが彼女を中に通した。レイシャンはソファで寝ているジョンイを見ても一切表情を変えなかった。

「彼女が母親のレイシャンよ。私の学生の時の友達なの」

「どうも、みなさんジョンイの面倒をみてくれてありがとう。でも悪いけど私はあの子を引きとりませんよ」

は?とみんなが顔を前に出す。彼女はふてくされた顔で理由を話した。

「疲れちゃったのよね、子育てって大変で。思うようにいかないし。だからもういらないと思って。たまたまもらった十二楽坊のチケットでコンサート行って、ユエンなら優しいから拾ってくれるんじゃないかと思ってさ」

「なんて勝手なの!子供は自分のおもちゃじゃないのよ。捨てる拾うの問題じゃないでしょう」

ユエンが怒った時、ジンが突然立ち上がってレイシャンの頬を叩いた。みんなが止めに入る。

「黙って聞いてりゃ勝手な事言って!あんたそれでも母親かよ!ジョンイがどんな思いで毎日を過ごしてるか知らないだろ?え!夜寝る時泣いてるんだよ!あんたに会いたいって寂しがってるんだよ!」

ジンの言葉使いはひどかったが迫力あった。ジンは男っぽい所がある。だから女の子のファンが多いのだ。

レイシャンは「何するのよ!」と立ち上がりジンとにらみ合った。ジェンナンとソンメイが間に入る。

「ジン、私達は音楽家よ。人を癒すのも感動させるのも喜ばすのも、音楽でしかないのよ」

「つまり、未婚の私達はこの人を言い聞かす事ができないなら、音楽でお説教しましょうってこと」

ジンはそんなことができるのかと不安があったが、今はやるしかないと思い了解した。

「みんな集まって!1曲弾く準備しよう!」

「・・・しなさいよ」

「クン!」

壁によしかかっているクンが、腕を組んで動かない。近くにいるジンジンも首を傾けやる気なさそうだった。

「なんで私達がそんな事しなきゃならないのよ。他人の子だし。大体親がそんなんだったら施設に・・・」

バン!!とジンの右手がクンの顔の横を通って壁をついた。そしてキツイ上目遣いでクンを見つめた。

「いつまでも、らしくない事言うんじゃない!!」

ジンには目力がある。それはキリッとした美人に見える事が多いが、見方を変えれば怖いとも思える。彼女にたまにモデルの誘いが来るのはこの魅力のためだ。今の目は、クンには怖く感じる目だった。

「わかったわよ・・・ごめん。協力するわ・・・」

ジンジンも2回うなずいた。年下でも今のジンはこの中で1番怖く、そしてかっこいい女性だろう。

レイシャンを連れて練習室に移動し、バック演奏の方々にも1曲弾く承諾を得た。ジェンナンが言う。

「みんな、演奏する曲は『蝴蝶』よ」

「どうして?あれはラブストーリーじゃない」

「いい?ラブストーリーだと知って聞くからそう想像するのであって、それを知らなければ聞く人によってはどんな想像もできるはずよ。後半のスリルある音楽で、私達の訴えを感じ取ってくれると思うの」

なるほどね。何かに追い詰められるような、逃げられないような、そんな気持ちになってくれるようにか。

「演奏する前にちょっと言わせて欲しい」

レイシャンを目の前に座らせ、みんながそれぞれの配置についた時、ジンが前に出て言った。

「あの子の面倒見てたのは私だよ。毎日ずっと一緒にいたけど、いつもママは、ママはって聞くんだよ。私がどんなに可愛がっても言うの。あの子にとって、あなたの代わりになれる人は誰もいないってことだよ」

レイシャンは胸が締め付けられる思いになった。言い終わるとジンは戻り、1人のための演奏が始まった。

この『蝴蝶』とは、前半はおとなしめだが後半はガバッと迫力ある音楽になる。

レイシャンは身動きせず聞いていた。後半になり二胡が琵琶がと、全楽器が激しい演奏になる。激しく強く!何かが迫ってくるような、でも逃げられないような・・・頭の中が乱れてくる、目をきつくつぶった。

音楽学校にいたのだもの感情移入はできる人だ。レイシャンは両手で口を抑え泣き始めた。

「ジョンイ・・・ママが・・・ごめんね・・・・ごめんねぇ・・」

涙は止まる事はなかった。曲はクライマックスを迎える。ジンは演奏中ずっと彼女から目を離さなかった。

「レイシャン、大丈夫?私達の声、聞いてくれたのね」

演奏が終了し、ユエンがレイシャンのそばによる。彼女は肩をふるわせながらずっと泣いていた。

 しばらくし、やっと落ち着いた所でジョンイを呼んだ。ジョンイは嬉しそうにレイシャンに抱きつく。親子はきつく抱き合った。見ていたメンバーはみんな感動し涙した。やっとジョンイの心からの笑顔が見れた・・・

「じゃあジョンイ、ジン姉ちゃんとはお別れだよ。元気でね!」

ジンがジョンイの頭をなでる。彼は嫌だとダダをこねたが、ジンが抱きしめ説得した。ありがとうジョンイ。

「私から、最後に一言。・・・なんてゆーかさ・・・」

ジンが見送りに外に出た時レイシャンに言った。太陽の光が眩しくて、しかめっ面になりながらも、

「自分の大切なものは自分で守りな」

左手を腰にあて首を少し傾ける、目を細め真剣な顔と口調で言うジン。大人っぽくとてもカッコいい!

レイシャンは軽くうなずき、ジョンイの手をひっぱって去って行った。ジョンイは何度も振り返り手を振った。

「ジン、お疲れ様」

ビンチュイが肩をポンと叩く。ジンは遠くなって行く二人を見て少し涙を流していたが見せないようにした。

「フー。疲れたよ、ほんと。でもま、楽しかったしいい思い出だよ。さぁ!練習に戻ろう」

フンと大きく鼻をすするとジンは平気な顔をして、ビンチュイの背中を両手で軽く押しながら中に入った。

「ジンー!これ作ったの、食べて食べて!」

次の日からなぜか、ジンの周りにはとりまきが出来るほどモテるようになった。もちろんメンバーに。

「ジンってあんなにかっこよかったのね、今回の事で私惚れ直しちゃったわ!」

「惚れてたのかい!アハハハ、クンったら」

「なんかさ、ジンはいい経験したと思うよ。子供がいるなんて私達にはずっと先のことだもん」

「わかんないよー案外1年後にはこの中の誰かにおめでたい事があるかもしれないしょ」

「冗談!私達は有名人よ。結婚や子供が出来たら十二楽坊をやってられないわよきっと」

「そんな・・・。でも確かに結婚したら自分のファンは減るだろうね。誰かのものになると冷められるよね」

みんな無言になる。どっちが幸せなんだろう・・・結婚する事?人気音楽家でいる事?両方は無理?

「私はファンのみんなが恋人よ!」とビンチュイ。

「私は実際の恋人を選ぶかな・・・女の子だもん」とリーチュン。

「私はわかんないな・・・どっちが幸せかと聞かれても・・・栄冠もファンも家庭も全部手に入れたい!」

ジンジンの言葉でみんな考え込む。世の中そんなにうまくはいかないだろう。どれか1つは遅くなる・・・

「ジンは?今すぐ結婚したいと思う?」

「私はまだお嫁には行かないな。だって楽坊のお姉様グループが行ってからじゃないと行けないもんねー」

「大きなお世話よ!!」

ジェンナンとソンメイがムキになって声を合わせる。ジンはアハハと声を出して笑った。みんなも笑った。

するとジンの携帯が鳴った。メールだったので右手だけで操作する。送り主はあの彼だった。

『あの子が帰って寂しくないかい?よかったら、今晩メシ行かない?』

やった!と左手でガッツポーズ。そんなジンを見てみんな「あー」と口々に言いながらニヤニヤと注目する。

「うそつきだぁー、まだ行かないって言ったばかりなのに。よぉし、私が断ってあげよう。貸して!」

ひょいとクンが携帯を取り上げた。「あ、ちょっと!」ジンが取り返そうと手を伸ばすがクンは体をよじる。

「いいじゃない、私に任せて!でもいいね、ジョンイ君はきっと恋の天使としてジンの前に現れたのね」

「そうかもしれない・・・てゆーかそれとこれとは関係ないわ、返してよぉ!」

 私はまだ夢の階段を登ってる途中です!第2の幸せよ、もうちょっと待っててね。


  • 2005/02/17~02/23
  • written by りょう


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