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楽坊帝国英雄列伝 補足説明 by 朝霧


七種の武器
・青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)
・鉤鎌刀(こうれんとう)
・鉤鎌槍(こうれんそう)
・方天戟(ほうてんげき)
・蛇矛(じゃぼう、だぼう)
・三尖刀(さんせんとう)
七種の武器の内、青龍偃月刀、方天戟、蛇矛、三尖刀は三国志演義の中で特定の人物が愛用していますし、鉤鎌刀、鉤鎌槍もマンガやアニメ、ドラマ等では良く描かれています、でも七種の武器は実際の三国時代には存在しないものばかりです、ですから私の作品ではこれらの武器は楽坊だけが所有しています、伝説の名匠と同じ王冶子を名乗る謎の刀工が鍛えた実際には存在しない武器という設定で、楽坊の神秘性や貴種性を高めるためのアイテムとして登場させました、ですから神剣や魔剣といったものではないです、楽坊が強いのはあくまでも詹麗君さんや蒋瑾さん一人一人が強いのであって、決して武器によって力を得ているのではないのです、凄い彼女達が持つにふさわしい武器というだけです。
それと詹麗君さんの方天戟を朱柄(しゅえ=朱色の柄)にしたのは中国とは関係なく、日本の戦国時代に一国(一大名家)でただ一人、武勇随一の士のみに与えられた皆朱の槍にちなんだものです、最高の名誉でも戦場では目立つしなによりも最大の手柄首なので真
っ先に狙われます、尤もそれらをはじき返すだけの実力がないと手にすることも出来ない。とにかく楽坊最強は詹麗君さんなので皆朱の槍ならぬ皆朱の方天戟です。
詹麗君さんの朱柄に対してレイ・インさんは白柄です、これは白に特別な意味はなくて秦良玉(しんりょうぎょく=明末に活躍した正史にその名を残す女性の将軍)が率いた白杆兵(はっかんへい)から取ったものです、白杆兵の名の由来は白蝋樹(トネリコ)で柄を作った槍を装備していたため。

鐙(あぶみ=鞍の両脇にたらして乗り手が足をのせる馬具)について
鐙は三国時代の後半には発明されていたと思われますが、この作品ではそれを少し早めてしかもレイ・インさんが考案したことになっています、これはレイ・インさんと馬との関わりがとても深いことを意味しています。

馬甲(ばこう=馬専用の鎧)について
馬を鎧で守ることは紀元前の戦車を使用していた時代からありましたが、騎兵の馬を鎧で覆うというアイデアは長い間無く、鐙の登場と時を同じくして再登場しました。

楽坊五駿(がくぼうごしゅん)について
・踰輝(ゆき=輝きを踰えるもの)スン・ティンが騎乗します
・挾翼(きょうよく=2枚の翼を持つもの)蒋瑾が騎乗します
・越影(えつえい=影を越えるもの)詹麗君が騎乗します
・超光(ちょうこう=光を超えるもの)レイ・インが騎乗します
・奔霄(ほんしょう=夜を走るもの)イン・イェンが騎乗します

楽坊五駿は「穆王八駿」から選んだもので作者のオリジナルではありません
穆王八駿(ぼくおうはっしゅん)
穆王(?-BC940?)周王朝第5代の王、穆王は穆王八駿などの名馬を使い異民族の征伐を行ったり、崑崙山(こんろんさん)に赴き西王母(せいおうぼ)にあったと云われています、とりあえず残りの3頭も紹介します。
・絶地(ぜっち=あまりにも速く走り、土を踏まない)
・翻羽(ほんう=飛ぶ鳥を追い越す速さ)
・騰霧(とうむ=雲に乗って走る)
これらの八頭は神話の域に入る馬なので更に凄い特徴があります、例えば奔霄は夜であれば、一夜で5,000㎞を走るとか、踰輝は身体の毛が光り輝いているとか、超光は体は1つでも影は10あるとかです、私の作品の中ではさすがにこれほどの力は有りませんが七種の武器と違い楽坊五駿は普通の馬とは桁違いの能力を持っています、もっともそれはもの凄い速さで走るとか、大きな障害物を軽々と跳び越えるといったものです、空を飛んだり水の中に潜ったりはしません。

銭江秋濤(せんこうしゅうとう)について
銭江は銭塘江のこと、杭州を流れる銭塘江は浙江省第一の大河で海嘯が有名です、海嘯は大潮の満潮時潮の波が川の水面より高くなり、川の上流に向かって逆流し高波が起こる現象で、銭塘江ではだいたい毎月起こるそうですが特に旧暦8月15日前後の数日間の海嘯は大海嘯と呼ばれるほど大きく、銭江秋濤と呼ぶそうです。
杭州の古名が銭塘で三国時代も銭塘でした、少し話は違いますが本文の中で詹麗君さんが旅の目的地に会稽を選んでいます、これはこの話の中で馬菁菁さんの故郷が会稽なので、何となく出会っているかも知れないと思ったからそうしてみました。
更に話は違って行きますが、馬菁菁さんの故郷を会稽にしたのは会稽が今の紹興だからです、紹興といえば紹興酒です、女児紅の伝説は今から約二千年前の話らしいので、三国時代にそのような風習が既にあっても不思議ではないだろうと勝手に解釈して、書けるか書けないかは判りませんが馬菁菁さんを主役にして女児紅にちなんだ小編を書いてみたい、という希望が少しあります、女児紅をモチーフにした話は馬菁菁さんが一番似合うと思っているので。

王冶子(おうやし)について
中国の伝説的名匠、呉の干将・越の王冶子と並び称される(楚の欧冶子とする書もある)春秋時代の呉越が激しく覇を競い合っていた時代に活躍した人だといわれています。作品には、盤郢(ばんえい)魚腸(ぎょちょう)湛盧(たんろ)などがあります。

莫耶の剣(ばくやのけん)
上の王冶子に書いた呉の干将が鍛えた名剣、干将と莫耶を題材にした話は中国の人たちに好まれたテーマらしく、たくさんの物語があります。それも様々なストーリーになっていて千差万別です、ここではジャン・クンさんのところで書いた莫耶の剣の元になった物語(朝霧の読んだ話)を書きます。
富国強兵につとめる呉王闔閭は軍備の拡充に日々心を砕き、その為に当時の呉国には多数の剣匠が召し抱えられていました、その中で特に優れた技術と見識を持ち王の信頼もっとも篤き剣匠が干将でした、
ある日、呉王闔閭は干将に自らを飾るにふさわしい剣の鋳造を命じます、王の命を受けた干将は、期待に応えるべく最高の材料を集める、すなわち、五山の精、六英の金である。そして天地陰陽の気を慎重に見極めてから鋳造に取りかかります。干将の情熱と優れた技は、神々が思わず干将の鍛冶場に集まりその作業に見入ってしまうほど素晴らしいものでした、しかし不思議なことに干将が必死にふいごを吹き、持ちうる全ての技を駆使しても、材料が溶けてなじまない。その工程に何一つ落ち度はない、何度やり直してもうまくいかない、連日連夜の作業に憔悴してしまった夫干将に、ある日妻の莫耶が訊ねます、
「まだ王様に献上する剣はできあがらないのですか?」
「材料が上手く溶け合ってくれないんだ」
「いったいどうしてですか」
「それが判れば、もうとっくに剣はできあがっているよ」
莫耶はしばらく物思いに沈んでいましたが、やがて意を決して干将に言います。
「あなた。昔から神域に届くほど優れたしなを作り上げるには、人身御供が欠かせないと聞いています、それが足りないのではありませんか?」
「なるほど、確かに師匠が金属の類を鋳造する時には、いつもおかみさんと共に鍛冶場に入っていった、俺は一人で山にこもり身を清めてやっている、それが良くないのかも」
「きっとそうです、お師匠のおかみさんに出来たことなのだから、私にだって出来ます」
そして莫耶は髪と爪を切り身を清めた、干将もそれにならい二人は鍛冶場に入っていった、そして男女三百人の子供を集めると力の限りふいごを押させた、炭が真っ赤に燃え上がる、そのとき、莫耶が乗り出し炉の中に身を投じた、るつぼの中はとてつもない高熱である、莫耶の身体はたちまち溶けて金属と混じり合ってしまった、干将に、なにする暇もあろうはずがない、呆然と立ちすくむ干将、その目前で不思議にも炉の金属は溶け合っていった。妻の命と引き替えに得た金属を元にして、干将は陰陽ふた振りの剣を鋳造する、それは見事なできばえの名剣だった、彼は陽剣の方を自分の名と同じ干将、陰剣の方を妻の名である莫耶と名づけた、本来なら両方とも呉王に献上するべきなのだが、干将はそれをどうしても手放す気にはなれず、陰剣の方だけを差し出した、そうとも知らず闔閭は莫耶を心から愛し、宝物として秘蔵した。その後、干将は人知れず呉から姿を消します。
彼の行方は誰にも判りません、そして呉国も闔閭の孫、呉王夫差の時代に隆盛を誇りますが隣国越に攻められ滅んでしまいます、その混乱のさなか莫耶も失われてしまいました。

干将・莫耶の特徴について
当時は合金(両方とも青銅製の剣だったと思われます)のために生じる表面の色合いや模様によって剣を区別した、この見極めの技術を、相見と呼んで、その相見によれば干将は「陰陰として亀紋あり」莫耶は「髣髴(ほうふつ)として漫理があらわれていた」という。つまり干将は黒ずんで亀の甲羅のような模様のある剣で莫耶は刀身が細かいあやで覆われ、薄く曇って見える剣だったようです。

-2005/05/30~06/02
-written by 朝霧



コメントとトラックバック

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